こんにちはキャリーライフ中川です。
宅配・シニアカー・住まいから考える免許返納後の生活
免許を返納した後、「車の代わりは何にすればいいのか」と考えます。
バスなのか。
タクシーなのか。
家族に送ってもらうのか。
長年車を使ってきた生活を、別の乗り物一つですべて置き換えるのは簡単ではありません。買い物。通院。銀行。友人との交流。趣味。お墓参り。それぞれ行き先も頻度も違います。
一方で現在は、移動する方法だけでなく、食品宅配や移動販売など、自分が出掛けなくても生活に必要なものが届く仕組みも広がっています。免許返納後の生活は、「車の代わりを探す」のではなく、移動する・届けてもらう・家族に頼る・住まいを見直すという複数の方法を組み合わせて考える時代になっているのではないでしょうか。
今回は、免許返納後の実際の暮らしを考えます。

目次
1.車一台でしていたことを、まず分けて考える
2.近距離には「車以外の乗り物」という選択肢もある
3.買い物は「店へ行く」だけではなくなっている
4.最後に考えたい「車なしでもこの家で暮らせるか」
1.車一台でしていたことを、まず分けて考える
車を手放すことが不安なのは、一台の車が多くの役割を担っているからです。
例えば、ある高齢者の一週間を考えてみます。
| 用事 | 車を使っている頻度 | 車を使わない方法の例 |
| 食料品の買い物 | 週2回 | 宅配・移動販売・家族 |
| 病院 | 月1~2回 | タクシー・地域交通・家族 |
| 近所への用事 | 週数回 | 徒歩・電動車いす等 |
| 趣味・交流 | 週1回 | 地域交通・送迎 |
| 遠出 | 月数回 | 家族・公共交通 |
これを見ると、「車の代わり」を一つ決める必要がないことが分かります。
例えば、
買い物は宅配。
病院はタクシー。
近所は歩行を補助する乗り物。
遠出は家族と一緒に。
という生活も考えられます。
これまで車で行っていた場所を全部書き出して、「これは自分が行かなければならないのか」「別の交通手段で行けるのか」「そもそも届けてもらえるのか」と一つずつ分けることが、免許返納後の生活を考える第一歩になります。
車がなくなる=外出できなくなると一括りにしないことです。
2.近距離には「車以外の乗り物」という選択肢もある
スーパーや病院までは遠いけれど、所のコンビニ。友人の家。集会所。郵便局。といった場所なら、それほど遠くないという地域もあります。こうした近距離の移動では、ハンドル形電動車いすなどを利用する方法があります。一般に「シニアカー」などと呼ばれるものも、このハンドル形電動車いすの一種です。道路交通法上、一定の大きさや構造の基準を満たす電動車いすを利用する人は「歩行者」として扱われます。基準では、最高速度は時速6キロを超えないことなどが定められています。自動車を小さくした乗り物というより、歩くことを補助する移動手段として考えた方が分かりやすいでしょう。
高齢になり、「500メートル歩くのはつらいけれど、自分で近所へ出掛けたい」という人にとっては、一つの選択肢になります。
ただし、どこでも利用しやすいわけではありません。
- 歩道が狭い
- 坂道が急
- 道路の段差が大きい
- 車の交通量が多い
- 自宅から道路へ出るまでに階段がある
といった環境では、利用が難しい場合があります。
警察庁も、電動車いすの普及に伴って交通事故が発生しているとして、安全な通行方法や点検について注意を呼びかけています。「免許がいらない乗り物だから安心」ではありません。実際に使う道路を確認し、本人の身体状況や操作能力も含めて考える必要があります。
乗り物だけを見るのではなく、自宅から目的地までの環境を見ること
です。
3.買い物は「店へ行く」だけではなくなっている
免許返納後に大きな問題になるのが買い物です。
農林水産省では、店舗まで500メートル以上あり、自動車の利用が困難な65歳以上の高齢者を「食料品アクセス困難人口」として把握しています。車を使えなくなることは、食生活にも影響する問題として国も捉えています。
一方で、買い物を支える方法も増えています。農林水産省が2025年度に全国市町村を対象に行った調査では、回答した市町村の89.3%が食品アクセス対策を「必要」または「ある程度必要」と回答しています。そして86.8%の市町村では、行政または民間事業者による何らかの対策が実施されています。
実際の対策には、
- 食品宅配
- 御用聞き
- 買物代行
- 移動販売
- 買物バス
- 小規模店舗
などがあります。
興味深いのは、地域によって対策が違うことです。2025年度の調査では、大都市では「宅配・御用聞き・買物代行サービス等への支援」が多く、中小都市では「コミュニティバス・乗合タクシー等への支援」が多くなっています。
都市部なら商品を届けてもらう。地方なら人が移動する手段をつくる。というように、地域によって必要な仕組みが異なります。さらに移動販売では、商品を届けるだけではなく、自治体と連携した見守りを行っている事例もあります。農林水産省の2025年度調査では、移動販売の取り組みのうち、行政実施の約5割、民間事業者実施の約3割で市町村との見守り体制が構築されています。買い物は「スーパーまでどう行くか」だけではなくなってきています。人が店へ行く方法と、商品が人のところへ来る方法。この両方を使えるようになっています。免許返納を考えるときには、近所のバス停だけを見るのではなく、「この地域にはどんな宅配がある?」「移動販売は来ている?」「日用品も届けてもらえる?」と調べてみることも大切です。
4.最後に考えたい「車なしでもこの家で暮らせるか」
ここまで交通や宅配を組み合わせても、最後に一つ大きな問題が残ります。今住んでいる家そのものが、車のある生活を前提にした場所ではないか。ということです。
例えば、
郊外の住宅団地。
坂の上の戸建て住宅。
駅から遠い住宅。
中山間地域の実家。
こうした場所でも、車を運転できる間は不便を感じないことがあります。
玄関から車へ乗り、スーパーの駐車場まで行く。病院の駐車場まで行く。銀行の前まで行く。自宅と目的地を直接つないでくれるからです。しかし車を手放すと、自宅からバス停まで歩けるのか。道を上り下りできるのか。タクシーを日常的に利用できるのか。宅配サービスの対象地域なのか。という問題が見えてきます。
国土交通省も、高齢者の免許返納などによって地域公共交通への需要が高まる一方、人口減少や運転者不足による路線の減便・廃止が進み、全国で約2,500の「交通空白」が生じているとしています。だから、親の住まいを考えるときには、「家が古いか」「段差があるか」
だけでなく、車がなくても生活できる場所かという視点も必要になります。
例えば次のように確認できます。
▪買い物
店まで歩けるか。無理なら食品宅配や移動販売を利用できるか。
▪通院
公共交通で行けるか。タクシーを使うと月にどの程度必要になるか。
▪日常の外出
徒歩で行ける場所はどこまでか。坂道や階段は負担にならないか。
人とのつながり
車をやめても友人や地域との交流を続けられるか。
▪家族
子どもが毎週送迎できるのか。年に数回しか帰れないのか。「子どもが何とかする」と曖昧にしないことも重要です。
これらを組み合わせれば、今の家で暮らし続けられる場合があります。
反対に、買い物も難しい。通院も難しい。公共交通もない。家族も遠い。宅配サービスも限られている。という状況なら、住まいそのものを見直す時期が来るかもしれません。
それは、高齢になったから施設へ行く」という意味ではありません。やスーパーに近い住宅。
子どもの近く。理しやすい小さな住宅。高齢期の生活に合った地域。元気なうちなら、いくつもの選択肢から選ぶことができます。
まとめ
免許返納後の生活を考えるとき、「車の代わりになる乗り物は何か」だけを探す必要はありません。近所への移動には、歩行を補助する電動の移動手段。病院へはタクシーや地域交通。
食料品は宅配や移動販売。遠出は家族や公共交通。それぞれを組み合わせることができます。
そして、これからはもう一つ、「自分が移動しなくても暮らせる方法」考えることも重要になります。品アクセスへの対策は、全国の多くの市町村ですでに始まっています。
それでも解決できない場合に初めて、「この家で車なしの生活を続けられるだろうか」
と住まいまで広げて考える。免許返納は、車を一台手放して終わる話ではありません。
これまで車一台で成立していた生活を、移動・宅配・地域・家族・住まいに分けて、もう一度組み立て直すことなのだと思います。車を運転できなくなったから生活ができなくなるのではなく、車を運転しなくても生活できる方法を、元気なうちから少しずつつくっておく。
それが、安心して免許を手放せる社会と、高齢期の暮らしにつながっていくのではないでしょうか。
つづく