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こんにちはキャリーライフ中川です。

改修・住み替え・家じまいをどう選ぶ

築年数の古い実家に、高齢の親が暮らしている。子どもは地震を心配して耐震改修を勧めても、親からは、

「今さら大きなお金をかけたくない」

「長年住んだ家を離れたくない」

「自分がいなくなったら処分すればいい」

と返ってくることがあります。

耐震性に不安があると分かっても、すぐに工事へ進める家庭ばかりではありません。

考える必要があるのは、建物の強さだけではないからです。親はあと何年住みたいのか。工事費を誰が負担するのか。子どもは実家を引き継ぐのか。住み替えた後、家や土地をどうするのか。

今回は、高齢の親が暮らす実家について、耐震改修、部分的な安全対策、建て替え、住み替え、家じまいの選び方を整理します。

目次

1.耐震化は建物だけでなく、親の暮らしの問題
2.実家の将来に合わせて選べる5つの方法
3.親と子で意見が分かれる理由
4.工事を決める前に家族で確認したいこと

2023年時点の全国の住宅耐震化率は約90%です。一方、耐震性が不十分と推計される住宅は約570万戸残っており、そのうち約450万戸を戸建て住宅が占めています。国土交通省は、戸建て住宅と高齢者世帯が居住する住宅の耐震化を、今後の課題として挙げています。

数字だけを見れば、耐震診断を受け、必要な補強工事を行えばよいように思えます。高齢の親が暮らしている家では、判断が複雑になります。

例えば、200万円をかけて耐震改修をしても、親が数年後に施設へ入る可能性があります。

子どもが実家へ戻らない場合、改修した住宅を売却できるのか、賃貸や別の用途に活用できるのかも分かりません。反対に、費用を理由に何もしないまま大きな地震が起きれば、親の命や避難生活に関わります。

実家の耐震化は、

古い家を直すかどうか

だけの問題ではありません。

親がどこで、どのくらいの期間、どのように暮らしたいのか

を考えることでもあります。

耐震診断の結果が不十分だった場合、国土交通省も耐震改修だけでなく、建て替えを含めて検討するよう案内しています。また、自治体によって診断・改修・建て替えなどへの支援制度が設けられています。親の年齢や家族の状況によっては、住宅全体を改修することだけが正解とは限りません。

① 耐震改修して住み続ける

親が今後も長く住むことを希望し、買い物、通院、介護などの生活条件も整っているなら、住宅全体の耐震改修を検討する意味があります。

耐震工事に合わせて、

  • 寝室を1階へ移す
  • 段差を減らす
  • 手すりを設ける
  • 浴室やトイレを使いやすくする
  • 断熱性を高める

など、高齢期の暮らしやすさも改善できる場合があります。耐震改修と一般的なリフォームは分けて見積もることが大切です。「せっかく工事するなら」と水回りや内装まで広げると、総額が大きくなります。まず命を守るために必要な工事を確認し、その後に暮らしやすさを高める工事の優先順位を決めます。

② 生活する場所だけ安全性を高める

住宅全体の大規模改修が難しい場合は、寝室や普段長く過ごす部屋を中心に、安全性を高める方法があります。耐震シェルターや防災ベッド、家具の固定、寝室の移動などです。

これらは住宅全体を耐震化する工事ではありません。年齢、予算、工事中の負担を考えたとき、何も対策をしないよりも現実的な場合があります。

  • 親が一人暮らしである
  • 長期間の工事や仮住まいが難しい
  • 数年以内の住み替えを考えている
  • 全体改修に必要な資金を用意できない

という家庭では、まず命を守る場所を決める考え方があります。部分的な対策でどこまで安全性を高められるかは、建物によって異なります。先に耐震診断を受け、専門家と確認する必要があります。

③ 建て替えて住み続ける

土地や地域に暮らし続けたい一方、建物の劣化が大きく、耐震改修だけでは多額の費用がかかる場合は、建て替えも選択肢になります。新しい住宅は、必ずしも以前と同じ広さにする必要はありません。

親一人または夫婦二人の暮らしに合わせて、

  • 平屋にする
  • 部屋数を減らす
  • 庭や外構の管理を小さくする
  • 将来の介護を考えた動線にする

ことで、維持管理の負担を減らせます。

建て替えには建築費だけでなく、解体、仮住まい、引っ越し、家財整理なども必要です。

高齢の親にとって、工事中の生活や環境の変化が大きな負担にならないかも確認します。

広島市の2026年度の耐震化支援でも、一定の条件を満たす住宅について、耐震改修だけでなく、現地建て替え、別の場所への建て替え、除却を対象とした手続きが用意されています。制度を利用する場合、交付決定前に契約や工事を始めると対象外になるため、先に自治体へ確認する必要があります。

④ 安全で暮らしやすい場所へ住み替える

家そのものを直しても、地域での生活が続けにくい場合があります。

  • 車がなければ買い物や通院ができない
  • 坂道や階段が多い
  • 子どもが遠方に住んでいる
  • 近隣の店や公共交通が減っている
  • 広い家や庭を管理できない

耐震改修によって建物が強くなっても、親の暮らし全体が安全になるとは限りません。

子どもの近く、病院や買い物に便利な地域、高齢者向け住宅、管理しやすいマンションなどへ移る方法もあります。住み替えは、長年の家を捨てることではありません。

本人が元気で、自分の希望を伝えられるうちに、今後の生活に合う場所を選ぶ方法です。

住み替え後の実家については、売却、賃貸、一定期間の管理、家族による活用などを別に考えます。

⑤ 家じまいを見据えて安全に暮らす

子どもが実家を引き継がず、親も将来的な住み替えを考えている場合は、大規模な工事をせず、一定期間を安全に暮らすための対策を選ぶことがあります。

  • 家財を少しずつ整理する
  • 登記や権利関係を確認する
  • 売却できる可能性を調べる
  • 解体費用を把握する
  • 土地を誰が引き継ぐか話し合う
  • 思い出の品や写真を残す

家じまいは、親が亡くなった後に子どもだけで行うものとは限りません。親が住んでいる間に、何を残したいのか、家をどうしてほしいのかを確認できれば、家族の迷いを減らせます。

親と子が同じ家を見ていても、見えているものは違います。子どもが見ているのは、地震で倒壊する危険や、将来の管理負担です。親が見ているのは、家族と暮らした時間、地域とのつながり、毎日の生活そのものです。

子どもが、

「危ないから直した方がいい」

「もう住み替えた方がいい」

と結論から話すと、親には家を否定されたように聞こえることがあります。

親も、

「まだ大丈夫」

「余計なお金を使いたくない」

と言うだけでは、子どもに本当の希望が伝わりません。

話し合うときは、改修するかどうかから入るのではなく、暮らしについて具体的に確認します。

▪親がこの家で続けたいこと

庭仕事を続けたい。近所の友人と会いたい。仏壇を守りたい。できるだけ自分で生活したい。親が家に残りたい理由が分かれば、その希望を保ちながら安全性を高める方法を考えられます。

▪親が負担に感じていること

階段がつらい。冬の風呂が寒い。庭を管理できない。台風や地震が怖い。「家を離れたくない」という言葉の中にも、実際には困りごとが隠れている場合があります。

▪子どもができること・できないこと

費用を一部負担できるのか。工事の立ち会いができるのか。将来、実家を引き継ぐ意思があるのか。曖昧にせず、子ども側の事情も伝える必要があります。「いつか戻るかもしれない」と言いながら、実際には戻る予定がないままでは、親も判断できません。耐震化の話し合いは、親を説得する場ではありません。

親の希望と、家族が現実に支えられる範囲を合わせる作業です。

実家の耐震化については、次の順番で整理すると判断しやすくなります。

① 建築時期と現在の状態を確認する

建築確認の時期、構造、増改築、雨漏り、シロアリ、基礎のひび割れなどを確認します。

特に1981年5月以前の建物は、国も耐震診断を勧めています。

② 親が何年程度住みたいかを聞く

正確な年数を決める必要はありません。

「できれば最後まで住みたい」

「足腰が弱くなれば移ってもよい」

「一人になったら子どもの近くへ行きたい」

といった希望を確認します。

③ 住み続ける条件を整理する

耐震性だけでなく、

  • 通院や買い物
  • 階段や浴室
  • 介護サービス
  • 住宅や庭の管理
  • 緊急時の連絡
  • 一人暮らしになった場合の見守り

まで確認します。

④ 家の将来を確認する

子どもが引き継ぐのか。売却や賃貸の可能性はあるのか。土地だけを活かせるのか。改修後の使い道が分かれば、どこまで費用をかけるか判断しやすくなります。

⑤ 複数の費用を比較する

耐震改修費だけでなく、

  • 今後の修繕費
  • 建て替え費
  • 住み替え費
  • 引っ越しや家財整理
  • 空き家になった後の管理費
  • 将来の解体費

まで比べます。

最も安い方法ではなく、本人と家族が無理なく続けられる方法を考えます。

⑥ 契約前に自治体へ相談する

耐震診断、耐震改修、建て替え、除却の支援制度は、自治体によって対象や受付期間が異なります。先に契約や着工をすると補助対象にならない制度もあります。国土交通省も、地域ごとの支援制度について所在する市区町村へ確認するよう案内しています。

訪問販売で急な契約を勧められた場合も、その場で決めず、自治体の相談窓口や信頼できる建築士へ確認します。国土交通省は、国から依頼されたと称して耐震診断や工事を勧める悪質な営業にも注意を呼びかけています。

親の家の耐震化は、工事をするか、しないかだけでは決められません。

耐震改修して住み続ける。

生活する場所を優先して安全にする。

小さな家へ建て替える。

安全で便利な場所へ住み替える。

一定期間を安全に過ごしながら、家じまいを進める。

家族によって選ぶ方法は異なります。大切なのは、地震が起きた後や、親が判断できなくなった後に、子どもだけで決める状態にしないことです。

親が住み続けたい理由を聞き、家の状態と費用を知り、子どもが将来引き継ぐのかを正直に話す。耐震化とは、建物を強くすることだけではありません。

親の命を守りながら、その家を最後にどのようにつなぐのかを、家族で決めておくことです。

つづく