こんにちはキャリーライフ中川です。
親が介護施設へ入ったら、家のことは一段落する。そう思うかもしれません。
誰も住まなくなった家には、その日から別の管理が始まります。庭の草木、郵便物、換気、防犯、雨漏り、台風や大雨の後の確認。離れて暮らす家族なら、そのためだけに何時間もかけて家へ行くこともあります。空き家管理士協会が2026年に実施した調査では、施設入所中の高齢者の自宅管理について、92.0%が「家族にとって負担になっている」と回答しました。さらに83.5%が、現在の介護・福祉制度では対応しにくいと答えています。調査は家族介護者、ケアマネジャー、地域包括支援センター職員、介護施設や自治体の関係者など200人を対象にしたWeb調査です。全国の全世帯を代表する調査ではありませんが、介護現場で見えにくかった課題を示す数字として注目できます。
今回は、親が施設へ入った後に残る「家の管理」について考えます。

目次
1.施設に入っても、家の管理はなくならない
2.一番多い困りごとは「雑草・庭木」
3.介護と空き家対策の間にある問題
4.入所が決まったとき、家について決めておきたいこと
1.施設に入っても、家の管理はなくならない
施設入所が決まると、家族はまず本人のことで忙しくなります。施設との契約、引っ越し、必要な衣類や薬の準備、住所変更、医療や介護の手続き。その中で後回しになりやすいのが、それまで暮らしていた家です。すぐに売却するとは限りません。
本人が一時帰宅するかもしれない。施設での生活が続くかまだ分からない。家財もそのまま残っている。そのため、「とりあえず今のまま」という家庭もあります。人が住まなくなっても家の管理は止まりません。郵便物は届きますし、草木は伸びます。水漏れや雨漏りが起こることもあります。台風や地震の後には、建物に異常がないか確認する必要もあります。
そして、その役割を誰が担うのか。今回の調査では、自宅管理の担い手として最も多かったのは「同居していない家族」58.5%でした。
一方で、「誰も対応していない」も34.5%ありました。施設へ入れば家の問題がなくなるわけではなく、むしろ「住んでいない家を誰が見るのか」という新しい問題が始まります。
2.一番多い困りごとは「雑草・庭木」
家の管理というと、建物の修繕を思い浮かべるかもしれません。しかし、調査で最も多かった困りごとはもっと日常的なものでした。「雑草や庭木が伸びる」が69.0%。続いて、「家族が遠方で見に行けない」47.5%、「郵便物がたまる」44.0%、「近隣から苦情が出る」37.0%、「誰が管理すべきかわからない」32.5%でした。
一つ一つを見ると、小さなことに感じます。遠方に住む家族にとっては違います。庭の草を刈るために休日を使う。台風の後に家の様子を見るために帰る。郵便物を確認する。近所から連絡があれば対応する。そこには移動時間、交通費、仕事や家庭との調整が発生します。
つまり家の管理は、住宅だけの問題ではありません。
家族の時間や生活にも負担が広がる問題です。
3.介護と空き家対策の間にある問題
今回の調査で興味深いのが、83.5%が「現在の介護・福祉制度の中では対応しにくい」と答えたことです。介護サービスは、基本的には高齢者本人の生活を支えるためのものです。
一方、本人が住まなくなった家の草刈り、郵便物の確認、災害後の建物確認などは、「介護」そのものとは少し違います。だからといって、完全な空き家として処分できるとは限りません。本人が戻る可能性もありますし、家財や思い出の品も残っています。売却するのか、貸すのか、家族が使うのかも決まっていないことがあります。
ここに、介護では扱いにくい。でも、本格的な空き家対策を始めるにはまだ早い。という期間が生まれます。国土交通省の「令和6年空き家所有者実態調査」でも、相続によって取得された空き家が発生したきっかけとして、「老人ホームなどの施設への入居」が11.3%を占めています。施設への入居は、介護の問題であると同時に、住宅が空き家へ変わる一つのタイミングでもあるのです。
4.入所が決まったとき、家について決めておきたいこと
親の施設入所が決まったからといって、すぐに家を売る必要はありません。重要なのは、何も決めないまま管理だけが家族へ残らないようにすることです。まず確認したいのは、「誰が見るのか」です。近くに住む家族なのか。兄弟で分担するのか。専門の管理サービスを利用するのか。
次に、「どのくらいの頻度で見るのか」。郵便物、庭、建物の外観、室内の換気、水回り、災害後の確認など、必要なことを整理しておけば、毎回その場で考えなくても済みます。
鍵の所在、電気や水道をどうするか、火災保険、固定資産税、近所から連絡があった場合の窓口も決めておくとよいでしょう。そして、すぐに結論を出せなくても、「半年はそのまま管理する」「本人の生活が落ち着いたら家族で話す」など、次に考える時期だけ決めておく方法もあります。
今回の調査では、最低限の見守り支援が必要だとした回答が83.0%、自治体による支援を「必要」または「条件付きで必要」とした回答も58.0%ありました。
今後は、介護と住宅管理を別々に考えるだけでなく、その間をどう支えるかも課題になっていきそうです。
まとめ
親が施設へ入ると、本人の生活場所は変わります。しかし、それまで暮らしていた家がなくなるわけではありません。今回の調査では、施設入所後の自宅管理を92.0%が「家族の負担」と答えました。負担になっているのは、大規模な修繕だけではありません。
草木、郵便物、遠距離の移動、近所への対応、災害後の確認といった、小さな管理の積み重ねです。
これまで介護を考えるときは、誰が本人を支えるか」が中心でした。
これからはそこに、「本人が住まなくなった家を、誰が支えるか」という問題も加わります。
家を売るのか、残すのかをすぐ決める必要はありません。まず、施設入所や長期入院で家を空けることになったときに、誰が、どのように管理するのかを決めておく。
それだけでも、家族の負担と将来の管理不全を減らす一歩になります。
空き家は、相続した瞬間に突然生まれるものだけではありません。
親が家を離れたその日から、空き家になる前の時間は始まっています。
つづく