こんにちはキャリーライフ中川です。
住まい・介護・お金の整理
高齢の夫婦が支え合いながら、住み慣れた家で暮らしている。できるだけ今の生活を続けたいという希望は、本人にとっても家族にとっても大切です。
ただ、介護する人も高齢である老老介護では、一方の体調不良や転倒をきっかけに、二人の暮らしが急に立ち行かなくなることがあります。備えというと、施設を探すことを思い浮かべるかもしれません。
実際には、今の家で暮らし続けるために利用できる介護サービスや、住まいの改修、家族の役割分担もあります。
今回は、老老介護を家族だけで抱え込まないために、介護、住まい、お金の3つの視点から整理します。

目次
1.最初に相談先と役割を決める
2.介護サービスは負担の大きい部分から使う
3.住まいを今の身体に合わせる
4.お金と自宅の将来を家族で共有する
1.最初に相談先と役割を決める
老老介護で避けたいのは、夫婦の一方だけが介護のすべてを担い、家族も周囲も実情を知らない状態です。本人たちが「まだ大丈夫」と思っていても、介護者の通院、買い物、食事、睡眠まで成り立っているとは限りません。
まず確認したいのは、困ったときに誰へ相談するかです。要介護認定を受けている場合は、担当のケアマネジャーが中心になります。介護サービスをまだ利用していない場合や、どこへ相談すればよいか分からない場合は、地域包括支援センターが相談窓口になります。
地域包括支援センターは、高齢者の介護、健康、福祉、権利擁護などの相談を受け、必要な機関やサービスにつなぐ役割を持っています。本人だけでなく、離れて暮らす家族から相談することもできます。
家族内の役割も、一人に集中させないことが大切です。
例えば、
- 通院や緊急時の対応をする人
- ケアマネジャーと連絡を取る人
- お金や保険、支払いを確認する人
- 定期的に実家を訪問する人
- 住まいや修繕を確認する人
というように分けられます。
遠方に住んでいて日常の介護ができなくても、書類の管理や連絡調整を担うことはできます。「誰が介護するか」だけではなく、誰がどの部分を支えるかまで決めておくと、一人に負担が偏りにくくなります。
2.介護サービスは負担の大きい部分から使う
介護保険には、自宅で受ける訪問介護、施設へ通うデイサービス、短期間宿泊するショートステイなど、複数のサービスがあります。訪問、通い、宿泊を組み合わせて利用できる小規模多機能型居宅介護もあります。
すべてを一度に利用する必要はありません。
まず、介護する人にとって負担が大きい部分を整理します。
▪入浴介助が難しい
浴室は、立ち上がり、またぎ動作、滑りやすい床など、身体的な負担と転倒の危険が重なります。自宅での介助が難しければ、デイサービスで入浴支援を受ける方法があります。
▪夜に何度も起こされる
夜間のトイレ介助や見守りが続くと、介護者の睡眠不足につながります。
福祉用具や寝室の配置を見直すほか、ショートステイを利用し、介護する人が休める日を設ける方法もあります。
▪掃除や買い物まで手が回らない
介護者が家事をすべて担っている家庭では、介護そのものより、食事、洗濯、買い物などの積み重ねが負担になることがあります。介護保険で利用できる範囲をケアマネジャーへ確認し、自治体の生活支援、配食、民間サービスなども組み合わせて考えます。
▪相手を一人にできない
介護する人が自分の通院や外出を諦めている場合は、訪問サービスやデイサービスなどを利用し、家を離れられる時間をつくる必要があります。
外部サービスを利用することは、家族が介護を放棄することではありません。
介護する人が倒れず、二人の生活を続けるために、家庭内の役割の一部を専門職へ移すことです。
厚生労働省も、介護が必要になっても住み慣れた地域や住まいで暮らせるよう、保健・医療・福祉サービスを整えることを介護施策の基本に掲げています。
3.住まいを今の身体に合わせる
長年暮らした家でも、年齢や身体の状態が変われば、使いにくい場所が増えていきます。
特に確認したいのは、
- 玄関や廊下の段差
- 浴室のまたぎ部分
- トイレや浴室の手すり
- 滑りやすい床
- 寝室からトイレまでの距離
- 階段の上り下り
- 夜間の照明
- 車椅子や歩行器を使う場合の通路幅
介護する側にとっても、住まいの改善には意味があります。
本人が手すりを使って立ち上がれるようになれば、介助者が身体を抱える負担を減らせます。寝室とトイレが同じ階にあれば、夜間の移動や階段介助も少なくなります。
介護保険では、手すりの取り付け、段差の解消、滑りにくい床材への変更、引き戸への交換、洋式便器への取り替えなどが、一定の条件で住宅改修費の対象になります。原則として工事前の申請が必要で、支給限度基準額は一人につき20万円です。
福祉用具についても、身体の状態に応じて、手すり、歩行器、車椅子、介護ベッドなどを検討できます。利用する際は、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員と相談して選びます。
注意したいのは、大がかりなリフォームを先に決めないことです。本人の身体状況、介護方法、福祉用具との組み合わせによって、必要な改修は変わります。
最初にケアマネジャー、福祉用具事業者、施工者などが生活動線を確認し、どこを変えれば負担が減るかを整理することが重要です。
4.お金と自宅の将来を家族で共有する
在宅介護を続けるには、介護サービスの自己負担だけでなく、生活費、通院費、住宅改修費、福祉用具、配食、移動費なども必要になります。
施設入居を検討する場合は、入居時の費用、毎月の利用料、医療費、日用品費なども加わります。
どちらが安いかだけでは決められません。
確認したいのは、本人たちの収入と資産で、どの暮らしをどのくらい続けられるかです。
家族で共有したい項目には、次のようなものがあります。
- 年金など毎月の収入
- 預貯金と管理している人
- 生命保険や医療保険
- 固定資産税や火災保険
- 住宅ローンや借入金
- 毎月の介護サービス費
- 今後必要になりそうな修繕費
- 施設へ移る場合に使える資金
認知症が進むと、本人名義の預貯金や不動産について、家族が自由に手続きをできるわけではありません。
元気なうちに、通帳や保険証券、登記関係の書類がどこにあるかを確認し、誰が支払いを把握するか話し合っておく必要があります。
もう一つ忘れてはいけないのが、施設入居や入院によって誰も住まなくなった自宅です。
住まいを離れた後も、
- 定期的な換気や通水
- 庭木や草の管理
- 郵便物の確認
- 固定資産税や保険の支払い
- 雨漏りや設備故障への対応
- 防犯や近隣への配慮
「施設に入るかどうか」と「家をどうするか」は別の問題ですが、実際には同じ時期に考える必要が生じます。自宅へ戻る可能性があるなら、誰がどの期間管理するのかを決めます。
戻る見込みが低い場合は、家財整理、賃貸、売却、活用、解体などの選択肢を確認します。
すぐに手放す必要はありません。
ただ、誰も方針を決めないまま空き家にすると、介護を支える家族へ、住まいの管理負担まで重なることになります。
老老介護を続けるために必要なのは、夫婦の頑張りを増やすことではありません。
介護サービスを利用する。住まいを今の身体に合わせる。家族の役割を分ける。お金と自宅の将来を共有する。負担を一つずつ外へ出し、二人だけで抱え込まない形に変えることです。
住み続けることと施設へ移ることの間にも、さまざまな選択肢があります。
一部の介護を専門職へ任せながら在宅生活を続ける方法もあれば、短期入所を使いながら家族が休む方法もあります。
大切なのは、限界が来てからすべてを決めるのではなく、本人たちが希望を伝えられるうちに、暮らしの条件を整理しておくことです。
老老介護への備えは、今の家を諦めるためではありません。
本人と介護する人の両方が、無理のない暮らしを続けるための準備です。
つづく