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こんにちはキャリーライフ中川です。

「危険になる前」にできることは?

空き家を解体しようとすると、費用だけでなく、所有者確認や登記、申請書類などさまざまな手続きが必要になります。広島市は2026年10月1日以降、「老朽危険空家等除却補助制度」の申請について、原則として登記事項証明書の添付を不要とします。市が地番や不動産番号をもとに登記情報を確認することで、申請者の書類取得の負担を軽くするものです。確認できない場合などは、これまでどおり提出が必要になります。

こうした手続きの簡素化は、危険な空き家を放置しないために大切な取り組みです。

ただ、制度を見ていてもう一つ考えたいことがあります。行政が支援する段階まで空き家が老朽化する前に、家族でできることはなかったのでしょうか。

今回は広島市の制度変更を入口に、「空き家をなくす」よりも「困る空き家を減らす」ために何ができるのかを考えてみます。

目次

  1. 10月から何が変わる?広島市の空き家解体補助
  2. 最大50万円でも、すべての空き家が対象ではない
  3. 多くの空き家対策は「問題が起きた後」から始まる
  4. 空き家になる前なら、まだ選択肢が多い

広島市の「老朽危険空家等除却補助制度」は、老朽化によって倒壊などのおそれがあり、周囲へ危険を及ぼす可能性が高い空き家について、解体工事費の一部を補助する制度です。これまで正式な補助申請では、所有者などを確認するため登記事項証明書が必要でした。

2026年10月1日以降の申請では、行政側で登記情報を確認できるようになるため、原則として登記事項証明書の添付が不要になります。広島市によると、地番や不動産番号を確認できない場合などには、登記事項証明書の提出が必要です。登記事項証明書を法務局などで取得する手間が一つ減るため、所有者にとっては申請しやすくなります。

空き家問題では、「何とかしなければ」と思っていても、手続きの複雑さが行動を遅らせる原因になることがあります。その意味でも、行政が持っている情報を活用して、所有者が同じ書類を改めて取得しなくてもよい仕組みに変わることには意味があります。

ここで注意したいのが、「空き家を解体すれば50万円もらえる制度」ではないことです。対象となるのは、広島市内の戸建住宅などのうち、建物の腐朽や破損が市の基準以上に進み、さらに道路へ近接するなど、通行人へ危険が及ぶ可能性が高い空き家です。広島市が現地調査を行い、基準に該当するかを確認します。補助額は、解体工事費の3分の1など一定の計算方法によって決まり、1棟につき最大50万円です。2026年度は18件程度が予定されています。

そして、もう一つ非常に重要な注意点があります。広島市から補助金の交付決定を受ける前に解体工事を契約すると、補助対象外になります。「どうせ壊すから先に解体業者へ頼んでおこう」と進めてしまうと、後から制度を知っても利用できない可能性があります。まず市へ事前相談し、対象になるか確認してから進める必要があります。補助制度があるからといって、解体を先に決めるのではなく、順番を確認することが大切です。

この制度は、周囲に危険を及ぼす空き家を減らすために必要なものです。一方で、対象となる建物の状態を見ると、空き家問題の難しさも見えてきます。人が住まなくなり、管理する人がいなくなる。時間が経つにつれて屋根や外壁が傷み、庭木や雑草も伸びていく。さらに老朽化が進み、倒壊や部材の落下など周囲への危険が高まる。ここまで進んで初めて、解体費の補助という行政支援が必要になります。

もちろん、この段階の対策は欠かせません。ただ、キャリーライフが住まいの相談に関わる中で大切だと感じるのは、もっと早い段階には、もっと多くの選択肢があるということです。

例えば、まだ親が暮らしているときなら、「この家にいつまで住みたいのか」という話ができます。施設へ入居したり、子どもの近くへ転居した直後なら、誰が家を管理するのかを決められます。相続する前なら、家を誰が引き継ぐのか、売るのか残すのかについて家族で話すこともできます。何年も何も決めないまま時間が経つと、建物は傷み、荷物も残り、相続人が増えることもあります。

その結果、「活用を考える」段階から、「危険だから何とかしなければならない」段階へ変わってしまいます。

空き家対策というと、解体や売却を想像しがちです。本来は家をなくすことだけが対策ではありません。親がそのまま暮らせるように修繕する方法もあれば、家族が使う、貸す、売るという選択もあります。すぐには決められなくても、定期的に管理しながら家族で考える時間を持つこともできます。

広島市自身も、2026年版の「空き家のガイド」を、すでに空き家を所有している人だけでなく、相続や転居などによって将来空き家の所有者になる可能性がある人にも向けて作成し、「予防と備え」を一つの項目として扱っています。ここは非常に重要だと思います。

空き家になった瞬間から問題なのではありません。親が高齢になった。家の修繕が増えてきた。子どもは県外で暮らしている。将来、その家に戻る予定がない。こうした小さな変化が重なった先に、空き家があります。「この家をどう処分するか」から話を始めなくてもいい。

まず、

「親が住まなくなったら誰が管理するのか」
「この家を使いたい人は家族にいるのか」
「売るとしたらどのくらいの価値があるのか」
「残すなら、誰が維持していくのか」

といったことを、まだ困っていない段階で整理しておく。その時間があるだけでも、将来選べる道は変わってきます。

広島市が2026年10月から老朽危険空き家の補助申請を簡素化することは、所有者の負担を減らし、危険な空き家の解消を進めるための大切な改善です。最大50万円の補助も、解体費を負担する所有者にとって助けになります。この制度が必要になるのは、すでに建物の老朽化が進み、周囲への危険性まで高まった段階です。

私たちがもう少し早く考えられることもあります。

親が元気なとき。まだ誰かが管理できるとき。建物が十分使えるとき。家族で話ができるとき。その段階なら、残す、住む、貸す、売る、直すという複数の選択肢があります。

だからキャリーライフが考える空き家予防は、単純に「空き家をなくすこと」ではありません。空き家をなくすことより、“困る空き家”を減らす。危険になってから慌てて解体する家を一つでも減らすために、まだ何も起きていないときから家の将来を少し考えておく。

今回の広島市の制度変更を、「解体するときに使える補助金」という情報だけで終わらせず、そんなきっかけにもできるのではないでしょうか。

つづく