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相続が始まってから、「どこの銀行に預金があるのか分からない」「借金があるのかどうか分からない」「実家以外にも土地を持っていた」そんなことが分かるケースがあります。

相続対策というと、相続税や遺言を思い浮かべる人が多いかもしれません。相続放棄をするかどうかを判断するときにも、遺産分割をするときにも、まず必要なのは何を持っていて、何を引き継ぐことになるのかを把握することです。

国税庁も、相続税の手続きに必要な準備として、相続人や遺言の確認とともに「遺産と債務を調べ、目録や一覧表を作ること」を挙げています。これからの相続対策で大切なのは、財産をたくさん残すことだけではありません。

残された家族が、何を引き継ぐのか分かる状態にしておくことです。

目次

1.まず預金だけでなく「借金」も確認する
2.家や土地は「あるか」より「どうするか」まで考える
3.本人の希望を家族が知らないこともある
4.財産の場所が分かる状態をつくっておく

1.まず預金だけでなく「借金」も確認する

財産の確認というと、預貯金や保険、株など、プラスの財産から考えがちです。しかし相続では、借入金や未払い金などの債務も関係します。

国税庁も、相続財産を確認するときには、遺産だけでなく債務も調べる必要があるとしています。特に相続放棄を検討する場合、借金がどの程度あるのかは重要な判断材料です。預金は分かっていても、ローンや事業上の借入、保証債務などを家族が知らないこともあります。

だから確認したいのは、「財産はいくらあるか」だけではありません。

預金、保険、有価証券、不動産などの資産と、借入金や未払い金などの負担を合わせて見ることです。相続が始まってからゼロから探すより、どこに何があるのか大まかに分かるだけでも、家族の負担は大きく変わります。

2.家や土地は「あるか」より「どうするか」まで考える

相続で特に判断が難しくなりやすいのが不動産です。預金なら金額が分かります。

しかし実家や土地は、持っているだけではその価値や負担が分かりません。

誰かが住むのか。売却できそうなのか。遠方にある土地を誰が管理するのか。建物に修繕や解体が必要なのか。固定資産税や草刈りなどの負担はどの程度なのか。こうしたことまで見なければ、相続する側にとってプラスなのか負担になるのか判断できません。

2026年2月には「所有不動産記録証明制度」も始まりました。これは、亡くなった人などが登記簿上所有している不動産を一覧化して確認できる制度です。これまで、家族が把握していない土地が相続後に見つかり、相続登記から漏れてしまうことが課題になっていました。制度が整ってきたとはいえ、最初から家族が不動産の場所や使い方を知っていれば、相続後の判断はさらにしやすくなります。「土地を持っている」という情報だけではなく、その土地を次の人がどうするのかまで考えておくことです。

3.本人の希望を家族が知らないこともある

財産が分かっていても、次に困るのが「本人はどうしたかったのか」です。

実家を残してほしいのか。売ってもよいと思っているのか。特定の人に引き継いでほしい財産があるのか。家族に平等に分けたいのか。本人の考えを家族が知らないまま相続が始まると、残された人たちが一から判断することになります。

もちろん、家族で話しただけで法的に財産の分け方が決まるわけではありません。

希望を確実に残したい場合には、遺言を利用する方法があります。法務局では、自筆証書遺言を保管する制度も設けられています。相続対策をすぐ遺言作成だけに結びつける必要はありません。

その前に、「実家はどうしたいと思っているのか」「使っていない土地はないか」「家族に伝えておきたい財産はあるか」という話ができているだけでも、その後の判断材料になります。

相続で困るのは、財産が少ないからではなく、情報や考えが分からないまま残されることでもあります。

4.財産の場所が分かる状態をつくっておく

相続対策として、最初から完璧な財産目録をつくる必要はありません。まずは家族が必要な情報へたどり着ける状態をつくることです。

例えば、主に利用している金融機関、保険会社、所有している不動産、借入先、重要書類の保管場所などです。通帳や契約書をすべて家族へ渡しておくという意味ではありません。

「必要になったとき、どこを確認すればいいか」が分かればよいのです。

また、財産の内容は変わります。銀行口座を解約したり、不動産を売却したり、新しい保険に加入したりすることもあります。一度整理して終わりではなく、状況が大きく変わったときに見直す方が現実的です。相続対策というと専門家に相談しなければ始められないように感じますが、最初の一歩はもっと身近です。自分や家族が何を持っているのかを、分かる状態にする。そこから必要に応じて、税理士、司法書士、弁護士などへつなげればよいのです。

まとめ

相続放棄が増えている現在、これからの相続対策では「何を残すか」だけでなく、残された側が何を引き継ぐことになるのか分かるようにしておくことが重要です。

預貯金だけでなく借金はないか。どこに土地や建物を持っているのか。その不動産を今後誰かが使うのか。本人は財産をどうしてほしいと考えているのか。そして、それらの情報はどこを見れば分かるのか。こうしたことを整理しておけば、相続が始まったときに、相続するのか、放棄するのか、誰が何を引き継ぐのかを判断しやすくなります。

相続対策は、税金を減らすためだけのものではありません。家族が突然「何があるか分からない」ところから始めなくて済むようにしておくこと。

それも、これからの相続で大切な準備の一つです。

つづく