都会で仕事をしながら、週末は地方で過ごす。今の自宅を残しながら、実家や地方にも生活の拠点を持つ。そんな「二拠点生活」が、一部の特別な人だけの暮らしではなくなってきています。
国土交通省が行った全国調査では、18歳以上の約6.7%、人口に換算すると約701万人が二地域居住等を行っていると推計されました。さらに、現在は実践していない人でも、27.9%が「今後やってみたい」「条件が許せばやりたい」と答えています。
実際に二拠点生活をしている人が感じたメリットでは、「心身を休め、健康の維持や増進につながった」が28.5%で最も多く、「生活に刺激が増えた」21.7%、「趣味や娯楽の幅が広がった」21.0%、「普段の居住地ではできない体験ができた」20.8%と続きます。二拠点生活の魅力は「もう一軒家を持つこと」ではありません。
暮らす場所を二つ持つことで、仕事、休日、人とのつながり、時間の使い方そのものを変えられることにあります。
一方、移動費や住宅費、二つの家の管理という現実的な負担もあります。
今回は、今注目される二拠点生活について、メリットと続けるために考えておきたいことを整理します。

目次
1.二拠点生活はどこまで広がっている?
2.なぜ暮らす場所を2つ持つ人がいるのか
3.魅力だけでは続かない、費用と管理の現実
4.家を買う前に「暮らしを試す」という方法
1.二拠点生活はどこまで広がっている?
国土交通省では、主な生活拠点とは別の地域にも生活拠点を持つ暮らし方を「二地域居住」としています。全国約12万人を対象にした調査では、「主な生活拠点以外に滞在する地域がある」と答えた人から推計して、18歳以上の約6.7%、約701万人が二地域居住等を行っているとされています。さらに、現在は行っていない人のうち27.9%が関心を示しました。
国も二地域居住を新しい暮らし方の一つとして位置づけ、2024年には関連する改正法を施行しました。2026年度も、空き家を活用したお試し居住施設、コワーキングスペース、地域間の移動費を抑える仕組みなど、二地域居住を支える取り組みが進められています。
以前は、
「地方で暮らしたいなら移住する」という考え方が中心でした。しかし現在は、今の仕事や自宅を残したまま、もう一つの地域にも関わるという中間的な暮らし方が選べるようになっています。
2.なぜ暮らす場所を2つ持つ人がいるのか
二拠点生活のメリットについて、実践者5,938人への国土交通省調査では、「心身を休め、健康の維持や増進につながった」が28.5%で最も多くなりました。続いて「生活に刺激が増えた」が21.7%、「趣味や娯楽の幅が広がった」が21.0%、「普段の生活拠点ではできない体験ができた」が20.8%でした。「人との交流が広がった」という回答も15.4%あります。
例えば、平日は都市部で働きながら、週末は自然の多い地域で過ごす。実家を月に数回利用して、家の管理をしながら地域の人と交流する。リモートワークができる日は地方で仕事をする。完全に生活を移さなくても、暮らしの一部を別の地域へ移すことで、これまでとは違う時間を持つことができます。
二拠点生活の価値は、家を二つ所有することではありません。生活する場所を一つに固定しないことで、自分の暮らし方に選択肢を増やせることです。
3.魅力だけでは続かない、費用と管理の現実
一方、二拠点生活には負担もあります。同じ国土交通省の調査では、デメリットとして「移動が負担になった」という回答が29.3%、「生活拠点にかかる費用が負担になった」が18.1%でした。家が二つあれば、家賃や住宅ローンだけではなく、光熱費、保険、固定資産税、修繕費なども考える必要があります。
地方の一戸建てなら、庭の草刈りや建物の換気、台風や大雪の後の確認なども必要です。
さらに、毎週往復するのであれば、交通費だけでなく移動時間も負担になります。
二拠点生活で考えたいのは、「2軒目の家を買えるか」ではなく、「二つの生活拠点を無理なく維持できるか」ということです。
月に何回行くのか、片道どのくらい時間がかかるのか、年間でいくら必要になるのかまで見ておく必要があります。
4.家を買う前に「暮らしを試す」という方法
二拠点生活に興味を持ったからといって、すぐに家を買う必要はありません。むしろ最初は、実際にその地域で生活してみることが大切です。
国も、二地域居住を進めるうえで、空き家を活用した「お試し居住施設」などの整備を支援しています。
例えば、まず月に一度泊まってみる。夏だけではなく冬にも過ごしてみる。実際にその場所から仕事をしてみる。買い物や病院までの距離を確認する。地域の人との付き合い方も見てみる。旅行では快適だった場所でも、生活すると印象が変わることがあります。
特に二拠点生活は、住宅そのものより、移動時間や生活環境との相性が続けやすさを左右します。だから、家を買ってから暮らしを合わせるのではなく、暮らしを試してから家を決める。この順番が重要です。
実家がある人なら、新しく家を購入せず、まず実家をもう一つの生活拠点として使ってみる方法もあります。
まとめ
国土交通省の調査では、二地域居住等を行っている人は約701万人と推計されています。
現在実践していない人でも、約3割が関心を持っています。その魅力として、心身のリフレッシュ、生活への刺激、趣味の広がり、新しい体験、人との交流などが挙げられています。
一方、実際に始めれば、移動費や住宅費、家の管理という負担も発生します。
二拠点生活を考えるときの出発点は、「地方に家を買おう」ではありません。今の暮らしに、もう一つの場所が加わることで何が良くなるのか。そこを考えることです。
仕事の切り替えになるのか。趣味を楽しむ場所になるのか。地域との新しいつながりができるのか。実家をもう一度活用できるのか。その目的が見えてから、賃貸、実家活用、購入など、住まいの持ち方を選ぶ。
二拠点生活は、家を二つ持つことが目的ではなく、暮らしの選択肢を二つの地域へ広げることなのです。
つづく