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親が亡くなり、実家を相続した。自分は別の家で暮らしていて、実家へ戻る予定はない。

それなら、「売るか、貸すか、片付ければいい」と思うかもしれません。しかし実際には、相続した実家がそのまま空き家になるケースがあります。

その理由は、家族が無関心だからとは限りません。相続手続き、家財、兄弟姉妹の考え、費用、そして実家への想い。いくつものことが同時に重なり、「何とかしないといけないけれど、何から始めればいいか分からない」状態になるからです。

最初から「売る・残す」を決める必要はありません。

まず、誰が所有しているのか、何が家に残っているのか、家族はどう考えているのか

を整理することが第一歩です。

この記事では、相続した実家が空き家になりやすい理由と、家族が最初に確認したいことを整理します。

目次

1.実家は「相続した瞬間」に整理できるわけではない
2.相続した実家が空き家になる5つの理由
3.相続後に先送りしない方がよいこと
4.「売る・残す」の前に家族で整理したいこと
5.まとめ|空き家予防は、相続後の処分だけではない

1.実家は「相続した瞬間」に整理できるわけではない

不動産としてだけ考えれば、親が亡くなる。相続する。名義を変える。売却する。という流れは分かりやすく見えます。

実家には不動産以外のものも残っています。

家具。衣類。食器。写真。アルバム。書類。仏壇。親が大切にしていた物。そして、そこで家族が過ごした時間です。

そのため、法律上の相続と、家族の気持ちの整理は同時には進まないことがあります。

相談の現場でも、「売った方がいいことは分かっている」「誰も住まないことも分かっている」

それでも、親が亡くなってすぐに家まで手放す気持ちになれないという家族はいます。これは決断力の問題ではありません。実家は、資産であると同時に、家族の記憶が残る場所だからです。

2.相続した実家が空き家になる5つの理由

① 相続や名義の整理が進んでいない

最初に確認したいのは、土地と建物の名義です。2024年4月から相続登記は義務化され、不動産を相続で取得したことを知った日から原則3年以内に相続登記を申請する必要があります。正当な理由なく義務を果たさない場合は、10万円以下の過料の対象になる可能性があります。2024年4月より前に発生した相続で、まだ登記していない不動産も対象です。一定の場合、2027年3月31日が期限になります。

ただし、相続人が複数いると、誰が実家を取得するのか。売却するのか。共有にするのか。という話し合いが必要になる場合があります。ここが決まらず、家だけが空いた状態になることがあります。

② 家の中の物を整理できない

相続した実家には、親の物だけでなく、家族全体の物が残っていることがあります。

子どもの頃の学用品。写真。アルバム。昔の手紙。贈答品。親から引き継いだ物。こうした物を、「必要・不要」だけで分けるのは簡単ではありません。

特に、本人しか意味を知らなかった物は、亡くなったあとでは判断が難しくなります。

だから実家の片付けでは、「何を捨てるか」より先に、「何を残したいか」を確認する方が進めやすい場合があります。家を手放すことと、想い出を手放すことは同じではありません。写真や映像、家族の記録として残す方法もあります。

③ 兄弟姉妹で考え方が違う

実家に対する気持ちは、兄弟姉妹でも同じとは限りません。

「売却したい」「しばらく残したい」「自分は関わりたくない」「将来、子どもが使うかもしれない」というように、それぞれ考えが違うことがあります。

そして難しいのは、誰か一人の意見だけでは決めにくいことです。

不動産の価値だけでなく、誰が親を支えてきたか。誰が遠方に住んでいるか。誰が家財整理をするのか。といった事情まで重なることがあります。だから、実家の問題は不動産だけで解決しないことがあります。

④ 費用が分からず動けない

空き家になった実家には、さまざまな費用が発生します。

例えば、草刈り。庭木の剪定。修繕。固定資産税。火災保険。家財整理。解体。登記。売却時の諸費用。などです。

ただし、全部が必ず必要になるわけではありません。問題なのは、「いくらかかるか分からないから、とりあえずそのままにする」状態になることです。

最初から全費用を確定する必要はありません。まず、今すぐ必要な費用。数年以内に必要になりそうな費用。売却や活用を決めた場合に必要な費用。と分けるだけでも、判断しやすくなります。

⑤ 遠方に住んでいて管理できない

実家が遠方にある場合、管理そのものが負担になります。

草が伸びた。雨漏りしている。郵便物がたまっている。台風のあと家が心配。近所から連絡があった。こうしたことがあっても、すぐには確認できません。

仕事や家庭があれば、「次に帰省したときに」となりやすく、そのまま数か月過ぎることもあります。

空き家は、一度大きな問題が起きるというより、小さな管理不足が積み重なっていくことがあります。

3.相続後に先送りしない方がよいこと

実家を相続したからといって、すぐ売却する必要はありません。

結論は出ていなくても、確認しておいた方がよいことがあります。

▪土地・建物の名義

登記事項証明書などで、現在の名義を確認します。

相続登記には期限があるため、放置しないことが大切です。

▪家の状態

雨漏り。外壁。屋根。水道。庭。設備。など、現在の状態を把握します。

▪家財

重要書類や写真、大切な物と、処分できる物を分けます。

▪お金

固定資産税、保険料、管理費など、現在かかっている費用を確認します。

▪誰が管理するか

兄弟のうち誰が連絡窓口になるのか。誰が定期的に見に行くのか。これだけでも決めておくと、家の状態が分からなくなるのを防ぎやすくなります。

「売るか決まっていないから何もしない」ではなく、「結論はまだでも、現在地だけは整理する」という考え方です。

4.「売る・残す」の前に家族で整理したいこと

相続した実家について話すと、すぐに、売る。貸す。解体する。残す。という選択肢の話になりがちです。その前に整理したいことがあります。

▪親は家について何か話していたか

「家は残してほしい」「子どもに迷惑をかけたくない」「好きにしていい」など、親が生前に話していたことがないか確認します。

▪家族は何を残したいか

建物そのものを残したいのか。庭や風景を残したいのか。写真や家具を残したいのか。家族によって「残したいもの」は違います。

▪この家を使う人は本当にいるか

「いつか誰かが住むかもしれない」だけで残すと、何年も判断できないことがあります。

具体的に、誰が。いつから。どのくらい使うのか。まで考えると判断しやすくなります。

▪何を残せば後悔しにくいか

実家を手放すとしても、建物を所有し続けなければ想い出を残せないわけではありません。

写真。動画。親の話。家族が過ごした場所。家の中の風景。こうしたものを記録として残す方法もあります。

▪想い出を残すことと、家を手放すことは反対ではありません。

この整理ができてから、住む。貸す。売る。残す。解体する。という次の判断へ進みます。

5.まとめ|空き家予防は、相続後の処分だけではない

相続した実家が空き家になる理由は、一つではありません。

相続や名義。家財。兄弟姉妹。費用。距離。そして家族の感情。

こうしたことが重なり、「何とかしなければ」と思いながら動けなくなることがあります。

だから、空き家になったらすぐ売る。すぐ片付ける。ということだけが答えではありません。まず、今、この家がどんな状態なのか。家族はどう考えているのか。何を残したいのか。を整理することです。

そして可能であれば、本当は相続が発生する前から、家の名義。重要書類。家財。親の希望。将来誰が住むのか。について少しずつ家族で話しておく。

そうすれば、実家が突然「誰も決められない家」になる可能性を減らせます。

空き家予防は、空き家になってから処分することではなく、家族が判断できる状態をつくっておくこと。そこから始まります。

つづく