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こんにちはキャリーライフ中川です。

実家へ帰ると、昔と変わらない家があります。多少古くなっていても、屋根や水回りを直せばまだ十分住める。親も「この家で暮らせるうちは暮らしたい」と考えているかもしれません。ところが、少し家の外へ目を向けると、以前とは違う景色が見えてくることがあります。

近所のスーパーが閉店した。昔使っていたバスの本数が減った。かかりつけの医院がなくなった。商店街には空き店舗が増え、近所に住んでいた人も少なくなった。

住宅そのものはまだ住めても、その地域で暮らし続けるための環境が先に変わっていくことがあります。親の住まいを考えるとき、建物の状態だけを見ればよいのでしょうか。今回は「家」から少し視野を広げて、これからの地域と暮らしについて考えます。

目次

1.人口が減ると、暮らしを支えるものも変わっていく
2.スーパーがなくなることは、高齢者には大きな問題
3.車を運転できる今と、運転できない10年後は違う
4.これからは「家」ではなく「生活圏」まで見ておく

日本の人口が減少していることは、多くの方が知っていると思います。「人口が減る」と聞いても、それが自分や親の暮らしにどう影響するのかまでは想像しにくいものです。

国立社会保障・人口問題研究所では、2020年を基準として、市区町村ごとの人口を2050年まで推計しています。人口減少は一部の過疎地域だけの話ではなく、今後は地方の中規模都市にも広がっていくことが見込まれています。国土交通省も、人口減少によって地域公共交通や買い物、医療・福祉・介護といった生活サービスを維持することが難しくなる可能性を指摘しています。 ここで大切なのは、「人口が減る=人が少なくなる」ということだけではありません。

スーパーも病院もバスも、利用する人がいることで成り立っています。人口が減り、利用者が少なくなれば、営業時間の短縮や店舗の統合、路線バスの減便などが起こり、それでも維持できなければ撤退という判断もあり得ます。

国土交通省の過去の推計では、人口規模の縮小によって病院などの生活サービスを維持しにくくなる市町村が増える可能性も示されています。国も現在、交通、買い物、医療・福祉・介護などを地域で持続的に提供する「地域生活圏」という考え方を進めています。

これから住宅を考えるときには、建物があと何年使えるかだけでなく、その地域の暮らしがあと何年成り立つのかという視点も必要になってきます。

若い頃であれば、近所のスーパーが閉店しても「少し遠くの店へ車で行けばいい」と考えられます。しかし、80歳になった親にとってはどうでしょう。

片道5キロ先のスーパーへ行くために毎回車を運転する。重い買い物袋を持って帰る。雨の日や暑い日にも出掛ける。若い頃には何でもなかったことが、年齢とともに大きな負担になることがあります。

農林水産省が2025年度に全国の市町村を対象に行った調査では、回答した市町村の89.3%が、食品アクセス問題への対策が「必要」または「ある程度必要」と答えています。背景には高齢化だけでなく、食料品小売店の減少や地域公共交通の機能低下があります。これは山間部だけの問題ではなく、都市部でも起きています。

そのため各地で、移動販売、宅配、買い物代行、コミュニティバス、乗合タクシーなどの取り組みが広がっています。 こうしたサービスがあることは心強い一方で、親の暮らしを考えるときには、「今スーパーがあるから大丈夫」だけでは少し足りません。

普段どこで買い物をしているのか。その店がなくなったら別の店へ行けるのか。宅配を使えるのか。親自身がスマートフォンなどで注文できるのか。

買い物一つを見ても、住まいと地域は切り離せないことが分かります。

地方で暮らしていると、車があればそれほど不便を感じない地域もあります。スーパーまで10分。病院まで15分。銀行や役所にも車で行ける。親自身も運転しているので、家族から見れば「まだ大丈夫」に見えます。、車を使えなくなった瞬間に生活圏は大きく変わります。

徒歩で行ける場所はどこまであるのか。バス停まで歩けるのか。バスは一日に何本あるのか。通院するときには誰が送迎するのか。

これは免許返納をするかどうかだけの問題ではありません。病気やけがで一時的に運転できなくなることもありますし、夜間や悪天候では運転を控えるようになることもあります。

現在、国土交通省も、公共交通を利用しにくい地域を「交通空白」として、乗合タクシーや公共ライドシェアなどを含めた対策を進めています。 地域側でも新しい移動手段は増えています。ただし、どの地域でも同じサービスがあるわけではありません。

だから親が車を運転している今こそ、「もし車がなくなったら、病院までどう行く?」と一度考えてみる意味があります。これは「もう免許を返した方がいい」という話ではありません。今できている暮らしが、何によって成り立っているのかを知るための確認です。

親の住まいについて考えるとき、どうしても家の中へ目が向きます。階段は大丈夫か。浴室は寒くないか。耐震性はあるか。屋根や外壁を直す必要はないか。もちろん、どれも大切です。ただ、これから高齢期の住まいを考えるなら、家から少し外へ範囲を広げてみてもよいと思います。

例えば実家を中心に考えて、普段使うスーパー、病院、薬局、銀行、バス停、役所などがどこにあるのかを見てみる。その中で「車がなければ行けない場所」がどのくらいあるのかを確認します。

さらに、近所の様子も変わっていないでしょうか。空き家が増えた、近所付き合いが減った、以前あった店がなくなったという変化も、親のこれからの暮らしに関係します。すぐに「住み替えた方がいい」と結論を出す必要はありません。

地域によっては移動販売や乗合タクシー、新しい交通サービスなどが整備され、今の家で暮らし続けられる可能性もあります。家族が一定の支援をすることで暮らせる家庭もあります。大切なのは、家が住めるかどうかと、そこで生活できるかどうかを分けて考えることです。築年数だけを見れば、あと20年住める家かもしれません。

その20年間に親は年齢を重ね、地域も変わっていきます。「家は大丈夫」という答えだけでは、これからの住まいを判断できない時代になりつつあります。

実家を見るとき、私たちは建物を見ます。まだきれいだから大丈夫。リフォームしたから大丈夫。耐震工事をしたから、まだ長く住める。それでも、暮らしは家の中だけでは完結しません。食料を買い、病院へ行き、薬を受け取り、ときには銀行や役所へ行く。そのためには店や医療機関があり、そこまで移動する手段が必要です。親が元気で車を運転している今は、不便に感じないかもしれません。しかし、5年後、10年後には、親自身も地域も今と同じとは限りません。

だから実家の将来を考えるときには、「この家はあと何年もつ?」だけではなく、「この地域であと何年暮らせる?」という問いも加えてみる。家を売るためでも、住み替えを急ぐためでもありません。まだ選べる時期に、今の暮らしが何によって支えられているのかを知っておくためです。空き家は、家が古くなったから生まれるとは限りません。親がそこで暮らせなくなり、その後を家族が決められないまま時間が過ぎた結果として生まれることもあります。空き家になるずっと前から、建物だけでなく、親の暮らしと地域の変化まで一緒に見ておく。それも、これからの住まいを考える一つの方法ではないでしょうか。

つづく。