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「実家をそろそろどうするか考えないといけない」そう分かっていても、なかなか話が進まない。売ればいいのか、残せばいいのか。親に聞きたいけれど、話を切り出しにくい。兄弟でも考えが違う。実家じまいが難しいのは、費用や相続の問題だけではありません。

実家には、家族それぞれの記憶や親への想いが重なっているからです。最初から「売る・残す・解体する」を決める必要はありません。

まず必要なのは、家族がその家をどう感じているのか、これからどうしたいと思っているのかを知ることです。

国土交通省の最新調査でも、空き家の57.9%は相続によって取得されています。一方、相続前に何らかの対策をしていた世帯は23.0%にとどまりました。実家が空き家になってから考えるのではなく、親が元気なうちに少しだけ話しておく。

それが実家じまいの最初の一歩になるかもしれません。

目次

1.実家は「不動産」だけではない
2.空き家の約6割は相続から生まれている
3.相続前の話し合いで、その後が変わる
4.「残す」と「手放す」は反対ではない

1.実家は「不動産」だけではない

実家について考えるとき、実務ではさまざまな確認が必要になります。

名義は誰なのか。相続人は誰なのか。家や土地はいくらくらいなのか。売却できるのか。解体するといくらかかるのか。こうしたことはもちろん重要です。

住まいの相談をしていると、その前で立ち止まる家族がいます。

「父が建てた家だから、簡単には売れない」

「母がまだ手放したくないと言っている」

「自分はもう住まないけれど、なくなるのは寂しい」

「兄弟で実家への思い入れが違う」

家は不動産であると同時に、家族が長い時間を過ごした場所でもあります。

玄関を開けたときの景色。家族が集まった居間。親がいつも立っていた台所。子どものころに使っていた部屋。そのため、価格や維持費だけを並べても、すぐに答えが出ないことがあります。決められないこと自体が問題なのではなく、何に迷っているのかを整理できていないことが問題になる場合があります。

まず家族の気持ちを整理する。その後で、現実的な選択肢を見る。この順番も大切です。

2.空き家の約6割は相続から生まれている

実家の問題を「いつか考えればいい」と先送りすると、親が亡くなったあとに、相続と空き家の問題が同時にやってくることがあります。

国土交通省の「令和6年空き家所有者実態調査」では、空き家を取得した方法の57.9%が相続でした。

さらに、相続によって取得した空き家が空き家になったきっかけを見ると、

▪所有者の死亡 58.3%

▪転居 26.9%

▪老人ホームなどへの施設入居 11.3%

実家が空き家になるのは、親が亡くなったときだけではありません。施設への入居や住み替えをきっかけに、突然誰も住まない家になることもあります。

全国の空き家は2023年時点で900万戸、住宅全体の13.8%に達しています。空き家問題というと社会全体の大きな問題に見えますが、その始まりは、一つの家庭で「親の家をこれからどうしよう」と迷うところから生まれていることも多いのです。

3.相続前の話し合いで、その後が変わる

今回の国土交通省の調査には、実家じまいを考えるうえで興味深い数字があります。

相続によって空き家を取得した世帯のうち、相続前に何らかの対策をしていたのは23.0%でした。反対に、77.0%は特に対策をしていませんでした。そして、相続前に行われていた対策で最も多かったのが、「被相続人との話し合い」です。さらに、その後の空き家の状態にも違いが見られます。相続前に対策をしていた世帯では、「何もせず空き家のまま所有していた」割合が29.4%。対策をしていなかった世帯では45.1%でした。

国土交通省は、相続前に対策をしていない場合、そのまま空き家として所有され続けている割合が約1.5倍だったとしています。

もちろん、「家族で話せば必ず空き家にならない」という意味ではありません。売りたくても売れない家もあります。家族の事情もあります。親の気持ちが変わることもあります。それでも、元気なうちに、「この家は将来どうしたい?」「誰か住みたい人はいる?」「残してほしい物はある?」「もし施設へ移ったら家はどうしよう?」と話しておけば、何か起きたときに家族がゼロから考える必要はありません。

答えを決めるための話し合いではなく、考えを知っておくための話し合い。それだけでも意味があります。

4.「残す」と「手放す」は反対ではない

実家を手放すことに抵抗を感じる理由の一つに、「売ったら、家族の思い出までなくなってしまう気がする」という気持ちがあります。

でも、家を所有し続けることと、家族の記憶を残すことは同じではありません。建物を売却しても、思い出は残せます。

解体することになっても、家族の記録を残すことはできます。

例えば、片付ける前に家の写真を撮る。

玄関から各部屋まで動画で残す。

親に家を建てたときの話を聞く。

家族が集まっていた場所を撮影する。

昔の写真と今の家を一緒に整理する。

こうした方法もあります。

CarryLifeで「実家想い出フィルム」を考えた原点にも、この考えがあります。これまで家族写真では背景だった実家そのものを、今度は主役として残す。住宅をきれいに紹介する映像ではありません。そこで家族がどんな時間を過ごしてきたのかを残すものです。大切なのは、映像を作ることそのものではありません。想い出を残すことと、家を手放すことは反対ではない。そう考えられると、「家を残さなければ思い出もなくなる」という二者択一から少し離れることができます。

売る。

貸す。

家族が住む。

しばらく残す。

解体する。

どの選択をする場合でも、家族の記憶は別の形で残せます。

実家じまいは、何かを全部捨てる作業ではありません。残したいものを選び、そのうえで家のこれからを決める作業と考えることもできます。

まとめ

実家じまいがなかなか進まないのは、家族が決断できないからとは限りません。

そこには、親の気持ち。子どもの記憶。兄弟それぞれの考え。家を建てた経緯。これまで家族が過ごしてきた時間。が重なっています。

一方、現実には空き家の57.9%が相続によって取得され、相続前に何らかの対策をしていた世帯は23.0%でした。相続や施設入居が起きてから、「この家、どうする?」と初めて考えると、感情の整理と不動産・相続の手続きを同時に進めることになります。

だから、元気なうちにすべてを決める必要はありません。

まずは、「この家をどう思っている?」という話からでもいい。そして、残したい写真や物、家族の記憶があるなら、それを先に残す。そのあとで、家を売るのか、残すのか、貸すのかを考える。実家じまいは、家をなくすための話ではなく、家族が実家とのこれからの関係を整理すること。そう考えると、最初の一歩も少し変わるのではないでしょうか。

つづく