こんにちはキャリーライフ中川です。
健康寿命を延ばすためには、適度な運動、バランスのよい食事、十分な睡眠、健診などが大切です。厚生労働省の「健康日本21」でも、栄養・食生活、身体活動・運動、休養・睡眠など、生活習慣の改善が重視されています。同時に、本人の努力だけでなく、健康を支える社会環境を整えることも基本方針に含まれています。その環境の一つが、毎日を過ごす住まいです。歩きにくい廊下、寒い脱衣所、暗い階段、片付かない床。若い頃は気にならなかった家のつくりが、年齢を重ねると、外出や家事を減らす原因になることがあります。
今回は、健康寿命と住まいの関係を、運動、事故予防、温熱環境、暮らしやすさの視点から考えます。

目次
1.健康寿命は本人の努力だけでは決まらない
2.住まいが身体を動かす機会に影響する
3.住み慣れた自宅にも転倒の危険がある
4.元気なうちに始めたい住まいの見直し
1.健康寿命は本人の努力だけでは決まらない
健康寿命とは、健康上の問題によって日常生活が制限されることなく生活できる期間です。
病気が一つもないことではありません。持病があっても、自分で食事を作る、買い物へ行く、入浴する、人に会うといった生活を続けられていれば、自立した暮らしを保てます。
そのためには、運動や食事などの健康管理が欠かせません。ただ、「運動しましょう」と言われても、玄関に大きな段差がある、階段の上り下りが怖い、外出の交通手段がないという状況では、本人の意欲だけで行動を続けることは難しくなります。
住宅の中でも同じです。
洗濯物を干すために急な階段を上る。浴槽をまたぐのが怖い。庭の管理が大きな負担になる。
身体の状態と住まいが合わなくなると、できていたことを少しずつ諦めるようになります。
健康寿命を考えるときは、身体を鍛えることだけでなく、今ある力を使い続けられる環境になっているかを見る必要があります。
2.住まいが身体を動かす機会に影響する
高齢期には、特別な運動だけでなく、掃除、洗濯、料理、買い物など、日常生活の中で身体を動かすことも重要です。ところが、家の中が寒いと、一つの部屋から動かなくなることがあります。
冬はこたつで過ごす時間が長くなり、廊下、台所、洗面所へ移動する回数が減る。夏は室温が上がりすぎて、家事や外出を控える。住まいの温度は、快適さだけでなく、活動量にも関係します。
国土交通省が紹介する調査では、断熱改修によって居間や脱衣所の室温が上がり、住宅内での1日の身体活動時間が最大約50分増える可能性が示されています。ただし、すべての住宅や人に同じ効果が出るという意味ではなく、住環境と活動量の関連を示した調査結果です。断熱改修をすれば健康寿命が必ず延びる、と単純にはいえません。
それでも、暑さや寒さを我慢せずに移動できる環境は、家事や入浴、室内での活動を続ける助けになります。
確認したいのは、家全体の平均温度だけではありません。
- 居間と廊下の温度差
- 脱衣所や浴室の寒さ
- 夏の寝室や2階の暑さ
- 冷暖房を使いにくい部屋
- 電気代を気にして使用を控えていないか
といった、実際の暮らし方です。
3.住み慣れた自宅にも転倒の危険がある
長年暮らしている家は、本人にとって最も安心できる場所です。
一方、身体の動きや視力が変わっても、住宅の段差や家具の配置は以前のままということがあります。
消費者庁によると、高齢者の転倒事故の約半数は、住み慣れた自宅で発生しています。浴室・脱衣所、庭・駐車場、ベッド周辺、玄関、階段などが主な発生場所です。転倒の原因は、大きな段差だけではありません。小さな敷居、カーペットのめくれ、床に置いた新聞、電気コード、暗い廊下でも転倒は起こります。
高齢者の場合、転倒による骨折をきっかけに入院し、その間に筋力が低下することがあります。2022年の国民生活基礎調査でも、骨折・転倒は要支援や要介護となった主な原因の一つに挙げられています。「まだ転んだことがないから大丈夫」ではなく、転ぶ前に危険を減らすことが大切です。
住まいの安全対策は、行動を制限するためではありません。
安心して立つ、歩く、入浴する、外へ出るための環境づくりです。
4.元気なうちに始めたい住まいの見直し
住まいを整えるといっても、すぐに大規模なリフォームを行う必要はありません。
まずは、普段の生活を観察します。玄関で靴を履くときにふらついていないか。夜中に暗い廊下を歩いていないか。浴槽をまたぐときに壁をつかんでいないか。2階へ上がる回数が減っていないか。小さな変化に、住まいを見直すきっかけがあります。
▪床や通路を整理する
廊下、寝室、トイレまでの動線から、新聞、電気コード、小さな家具などを減らします。
片付けは見た目を整えるためだけではありません。安全に移動できる幅を確保するために行います。
▪夜間の照明を確認する
寝室からトイレまでの通路や階段に、足元灯や人感センサー照明を設ける方法があります。
明るさだけでなく、スイッチまで安全に移動できるかも確認します。
▪手すりを適切な場所へ付ける
玄関、トイレ、浴室、階段など、立ち座りや方向転換が必要な場所を確認します。
ただし、使う人の身長や動きによって適切な位置は異なります。身体に不安がある場合は、ケアマネジャー、理学療法士、福祉用具事業者などに相談してから設置する方が安全です。
▪生活の中心を一つの階へ移す
2階の寝室を1階へ移す、よく使う衣類を手の届く場所へまとめるなど、階段を使わなくても生活できる形を検討します。
使っていない部屋が増えているなら、家全体を以前と同じように使い続ける必要はありません。
▪室内の温度差を小さくする
窓の断熱、暖房器具の配置、脱衣所の暖房、カーテンの見直しなど、できる範囲から始めます。特に入浴前後の温度差や、夏の寝室の暑さには注意が必要です。
まとめ
健康寿命を延ばすためには、運動、食事、睡眠、健診など、日々の健康管理が大切です。
ただ、健康的な生活を続けようとしても、住まいが身体の変化に合っていなければ、動くことや外出することが少しずつ難しくなります。住まいの見直しは、古い家を新しく見せるためだけのものではありません。自分で歩く。家事をする。入浴する。外へ出る。
今できている生活を、少しでも長く続けるための準備です。
転倒や介護が必要になってから、一度に家を変えるのは簡単ではありません。
本人が動けて、希望を伝えられるうちに、危険な場所と負担になっている動作を確認する。
健康寿命を考えることは、身体だけでなく、毎日を支えている住まいを考えることでもあります。
つづく