こんにちはキャリーライフ中川です。
新築戸建てを取り巻く環境は、大きく変わっています。
資材価格や建築費は上がり、住宅を取得する世帯は減少しています。一方、全国にはすでに多くの住宅があり、空き家は900万戸を超えました。これまでの住宅会社は、新しい家を建てて引き渡すことが、事業の大きなゴールでした。これからは、家を建てた後の維持管理、リフォーム、高齢期の暮らし、相続、売却、家じまいまで、長期的に支えられる企業が求められるのではないでしょうか。
今回は、新築市場が縮小する中で、ハウスメーカーや工務店に求められる役割の変化を考えます。

目次
1.新築を販売するだけでは市場が広がらない
2.住宅の悩みは引き渡した後に増えていく
3.「家の出口」まで考えることが企業の価値になる
4.住まいと家族の意思決定を支える会社へ
1.新築を販売するだけでは市場が広がらない
住宅業界では、長く新築住宅の供給が事業の中心となってきました。住宅展示場や見学会へ来場した人へ土地や建物を提案し、契約、着工、完成、引き渡しへ進む仕組みです。この流れがなくなるわけではありません。
新しい耐震性や断熱性能、家族に合った間取りを求める人にとって、新築住宅は今後も大切な選択肢です。ただし、新築だけを中心とする市場には限界が見えています。
国土交通省の資料では、新築と既存住宅を合わせた住宅流通量のうち、既存住宅が占める割合は、2013年の30.8%から2023年には40.4%へ上昇しています。戸建住宅に限っても、既存住宅の割合は22.4%から30.5%へ増えました。
国が2026年3月に閣議決定した新しい住生活基本計画でも、新築供給だけではなく、既存住宅を活用する「循環型市場」の形成が掲げられています。住宅ストックの価値を最大限に活用し、既存の住宅や住宅地を市場へつなぐことが、今後の住宅政策の方向として示されました。住宅会社にとっても、顧客との関係を「新築を建てる人だけ」に限定していると、接点は徐々に少なくなります。すでに家を持っている人、親の家を引き継ぐ人、住み替えを考える人まで対象を広げる必要があります。
2.住宅の悩みは引き渡した後に増えていく
住宅会社と顧客の関係は、引き渡しで一区切りになります。ところが、家族にとって住まいの問題は、そこから何十年も続きます。子どもが生まれる。独立する。夫婦二人になる。親が高齢になる。介護が始まる。相続が起きる。家族の変化に合わせて、住宅に必要な役割も変わります。
建築から10年、20年が経過すれば、外壁や屋根、給湯器、水回りなどの修繕が必要になります。年齢を重ねると、階段、浴室の段差、庭の管理、大きすぎる間取りが負担になることもあります。
住まいの相談は、建てたときよりも、その後の方が複雑です。
- この家にいつまで住み続けられるか
- リフォームと住み替えのどちらがよいか
- 子どもは将来この家を引き継ぐのか
- 親が施設へ入った後、実家を誰が管理するか
- 売る、貸す、残すのどれが家族に合っているか
こうした問題は、建築だけでは解決できません。
不動産、介護、相続、保険、片付け、家族の意思など、複数の分野が関係します。
国の新しい住生活基本計画でも、住宅支援について、分野を越えた連携による「気づき」と「つなぎ」の充実が掲げられています。住宅会社がすべてを自社で行う必要はありません。
大切なのは、顧客の変化に気づき、必要な専門家やサービスへつなげられることです。
3.「家の出口」まで考えることが企業の価値になる
2023年の空き家は900万2,000戸となり、空き家率は13.8%で過去最高になりました。
売却用や賃貸用、別荘などを除いた、使い道が定まっていない空き家も385万6,000戸あります。現在の空き家の多くも、建てられた当初は、家族の希望が詰まった新築住宅でした。
子育てをして、家族の時間を重ね、長く大切に使われた家です。
問題は、家の役割が終わった後のことを、誰も決めていなかったことです。
子どもは遠方で暮らしている。親は施設へ入った。相続したものの、兄弟姉妹で話が進まない。その結果、思い入れのある家ほど、売ることも、貸すことも、片付けることもできず、時間だけが過ぎる場合があります。
住宅会社が新しい家をつくるなら、その家が将来どのように使われ、誰へ引き継がれ、最後にどのような形で役割を終えるかまで考える必要があります。これは、すべての住宅会社に家じまいを義務づけるという話ではありません。
建築後も顧客との接点を保ち、家族の変化に合わせて相談できる仕組みを持つことが、企業の新しい価値になるということです。
例えば、
- 定期点検や修繕履歴の保存
- 高齢期の住まいの見直し
- 子世代を交えた将来確認
- リフォーム、売却、賃貸の比較
- 相続や登記の専門家への接続
- 家財や想い出を整理する支援
- 最後の家じまいへの伴走
まで一つの流れとして考えられます。
「建てた家を長く守る」だけでなく、「次にどうつなぐか」まで支える企業であれば、家族は早い段階から相談できます。
4.住まいと家族の意思決定を支える会社へ
これからの住宅会社に必要なのは、単に商品数を増やすことではありません。住宅を販売する会社から、住まいと家族の意思決定を支える会社へ変わることです。
新築を検討する家族には、今の希望だけでなく、20年後、30年後の暮らしまで一緒に考える。すでに家を建てた顧客には、修繕やリフォームだけでなく、親の介護、子どもの独立、相続などの変化に合わせて声をかける。
家を引き継がない家族には、売却、賃貸、活用、解体などの選択肢を整理する。
住宅会社が直接対応できない分野は、地域の介護事業者、士業、不動産会社、片付け事業者などと連携します。
国の住宅政策も、既存住宅を最大限に活用するため、住宅市場に関わるさまざまな主体の連携を重視しています。これまで住宅会社は、家を建てる技術や性能を競ってきました。
今後は、それに加えて、
「この会社は、家族の変化を長く見守ってくれるか」
「困ったときに、適切な人へつないでくれるか」
「最後まで住まいの相談ができるか」
という安心感が、選ばれる理由になります。
まとめ
新築戸建ての市場が縮小しても、住宅会社の仕事がなくなるわけではありません。
建築だけを仕事と考えれば、市場は小さくなります。住まいに関わる家族の変化まで仕事と考えれば、支援できることは長く続きます。家を建てる。守る。直す。住み替える。引き継ぐ。最後に役割を終える。住宅の一生には、いくつもの判断があります。
これからのハウスメーカーや工務店に求められるのは、引き渡しまでの満足だけではありません。建てた後も家族との接点を持ち、暮らしの変化に気づき、必要な選択肢へつなぐことです。「建てて終わり」から、「見守り、整え、つなぎ、しまう」まで。そこまで支えられる企業が、人口減少と空き家増加の時代に選ばれていくのではないでしょうか。