二拠点生活というと、個人の暮らしを思い浮かべます。、会社にも「二拠点」という考え方が広がっています。 本社とは別に地方のコワーキングスペースを使う。社員が月に数日、地方のサテライトオフィスで働く。地域企業と仕事をするため、小さな拠点を置く。
これは、もう一つ支店をつくるという話ではありません。
会社そのものが「働く場所を一つに固定しない」という選択です。

目次
1.地方進出は「支店を出す」だけではない
2.地方に拠点を持つと仕事はどう増える?
3.地域だから見つかる人材や新しい事業
4.まずは小さく試してから決める
1.地方進出は「支店を出す」だけではない
これまで企業が新しい地域へ進出する場合、営業所や支店を開設する方法が一般的でした。
事務所を借り、社員を配置し、固定費を負担する。一定の売上が見込める企業なら可能ですが、中小企業にとっては大きな判断です。現在は、その前段階となる方法があります。
例えば、地域のコワーキングスペースを月に数回利用する。自治体が整備したサテライトオフィスへ社員を派遣する。地域企業とのプロジェクト期間だけ拠点を置く。こうした形なら、最初から大きな投資をする必要はありません。地方のサテライトオフィスを利用する企業は、通信環境や立地などの使いやすさを重視しています。一方、自社拠点を設置する企業では、経営者などの地縁、自治体の支援、交通の利便性などが地域選びのポイントになっています。
地方進出も、「出店するか、しないか」ではなく、「まず関わってみる」という進め方ができるようになっています。
2.地方に拠点を持つと仕事はどう増える?
地方に拠点をつくる意味は、家賃の安さだけではありません。
一つは、営業先との距離です。本社から電話やメールだけで営業するのと、定期的に地域へ入り、企業や自治体と直接会うのでは関係のつくり方が変わります。実際、地方オフィスを誘致する自治体でも、地域企業とのマッチングや営業先としての魅力を企業へ伝えることが重視されています。
例えば、東京の会社が地方企業向けにDXサービスを提供したい場合。都市部から全国へ営業することもできます。実際に地域へ入り、企業の業務や人手不足の状況を知ることで、「この地域では何が必要なのか」が見えてくることがあります。
これは営業だけではありません。建築、介護、人材、観光、IT、住宅など、地域によって課題は違います。地方拠点は、商品を売る場所というより、地域の困りごとを知る場所にもなります。
3.地域だから見つかる人材や新しい事業
もう一つのメリットが、人と事業の出会いです。地方には、その地域で暮らしながら働きたい人がいます。都市部へ転居しなければ働けない会社と、地域にいながら働ける会社では、採用できる人材の範囲も変わります。
地方自治体のサテライトオフィス誘致でも、地域の若者の就職先を増やしたり、地元の人材と進出企業を結びつけたりする取り組みが行われています。例えば熊本県天草市では、デジタル人材育成と企業誘致を組み合わせ、進出企業の人材獲得につなげる事業が進められています。地域企業との連携から、新しい商品やサービスが生まれることもあります。
新潟県三条市では、地域の強みであるものづくり産業と、製品企画やデザインなどを得意とする外部企業を結びつけるサテライトオフィス整備が進められています。これは分かりやすい例です。
地方へ行く目的が、「東京と同じ仕事をする」だけではなく、「その地域にある企業や技術、人と組んで、新しい仕事をつくる」へ変わっています。
4.まずは小さく試してから決める
地方に可能性を感じても、最初から事務所を借りて社員を常駐させる必要はありません。むしろ、小さく始めた方が判断しやすい場合があります。月に数日、地域のコワーキングスペースを利用する。自治体や商工会、地域企業と話してみる。
一つのプロジェクトを地域企業と一緒に行う。社員を一定期間派遣してみる。そこで顧客が生まれるのか、人材と出会えるのか、自社のサービスが必要とされるのかを見る。成果が見えてから、サテライトオフィスや営業拠点を検討する方法です。
地方進出で重要なのは、「どこに事務所を出すか」から考えないことです。
まず、「その地域で、誰と、どんな仕事をしたいのか」を考える。その答えによって、必要なのが月数日の利用なのか、サテライトオフィスなのか、正式な支店なのかが変わります。
まとめ
企業が地方へ進出する方法は、支店や営業所を開設するだけではありません。小さなサテライトオフィスやコワーキングスペースから地域へ入り、営業先を探したり、人材と出会ったり、新しい商品やサービスを試したりする方法があります。実際に自治体側でも、単なるオフィス誘致ではなく、地元企業とのマッチングや新しいビジネスづくりまで含めた取り組みが進んでいます。企業にとって重要なのは、「地方にも住所を持つこと」ではありません。
地方に新しい仕事の入口を持つことです。支店を出すほどの確信はまだない。でも、その地域には顧客や人材、新しい事業の可能性がある。そんなとき、まず小さく拠点を持って試してみる。地方進出は、大きな投資を決めてから始めるものではなく、地域との小さな仕事をつくるところから始める方法もあるのです。
つづく