こんにちはキャリーライフ中川です。
大規模修繕で考えたいこと
マンションを選ぶとき、多くの人が気にするのは立地、築年数、広さ、価格ではないでしょうか。長く住み、将来売却することまで考えるなら、もう一つ見ておきたいものがあります。
そのマンションが、これまでどのように管理され、修繕されてきたかです。
2026年9月28日、公正取引委員会は、関東地区のマンション大規模修繕工事を巡り、一部の設計コンサル会社や施工会社が受注予定者を決めるなどして競争を制限していたとして、排除措置命令や課徴金納付命令を行いました。
今回のニュースは発注方法の問題ですが、マンションに住む人にとっては、もっと身近な問いにもつながります。自分たちのマンションは、必要な修繕を適正な費用で行い、長く維持していける状態になっているだろうか。
マンションの資産価値を考えるうえでも、「管理」と「修繕」は無視できない要素になっています。

目次
1.大規模修繕は「工事をすればいい」わけではない
2.マンションは管理状態を見られる時代へ
3.修繕積立金と長期修繕計画がなぜ重要なのか
4.資産価値は「買ったとき」だけで決まらない
1.大規模修繕は「工事をすればいい」わけではない
マンションでは、外壁、防水、共用廊下、給排水設備など、建物全体に関わる部分を定期的に修繕していく必要があります。戸建て住宅と違い、一人の所有者だけで決めることはできません。管理組合が計画を立て、区分所有者から集めた修繕積立金などを使い、大規模修繕を進めていきます。
今回、公正取引委員会が問題としたのは、設計コンサル会社が関係する一部の大規模修繕工事について、施工会社側で受注予定者を決めるなどの行為が行われていたことです。また、施工会社から設計コンサル会社へ工事請負金額の一定割合に相当する手数料などが支払われていた事実も確認されています。管理組合からすると、大規模修繕は数千万円、規模によってはさらに大きなお金が動く工事です。
だからこそ、「専門家に任せているから大丈夫」だけではなく、どのように施工会社を選んだのか。事金額は適正なのか。必要な工事内容なのか。管理組合側も確認できる仕組みを持つことが重要になります。
大規模修繕は、単なる建物の修理ではありません。マンション全体のお金と建物の将来を管理する仕事でもあります。
2.マンションは管理状態を見られる時代へ
マンションの価値というと、「駅から何分か」「築何年か」「何階か」といった条件を思い浮かべがちです。もちろん、これらは重要です。
一方で国は、マンションの「管理状態」そのものを見えるようにする制度を進めています。2022年度から始まった「マンション管理計画認定制度」では、一定の基準を満たしたマンションの管理計画を自治体が認定します。
認定されるためには、管理組合が適切に運営されているか。管理規約が整備されているか。
管理費と修繕積立金が適切に管理されているか。長期修繕計画が作られているか。といった項目が確認されます。
国土交通省のポータルサイトでも、この制度について、マンションの管理状況を「見える化」し、これから購入する人にも管理状況が分かりやすくなることが期待されていると説明しています。これは大きな変化です。
これまでは同じ築20年のマンションなら、立地や広さなどが比較の中心でした。実際には、定期的に修繕してきたマンション。修繕を先送りしてきたマンション。十分な修繕積立金を準備しているマンション。将来必要なお金が不足しているマンション。同じ築年数でも、中身は同じではありません。
「何年建っているか」だけでなく、「その年月をどう管理してきたか」を見る必要があります。
3.修繕積立金と長期修繕計画がなぜ重要なのか
マンション管理計画認定制度では、長期修繕計画についても具体的な基準があります。現在の基準では、計画期間は30年以上で、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれていることなどが求められています。さらに、修繕積立金が著しく低い金額になっていないかも確認されます。
ここで考えたいのは、修繕積立金が安ければ得なのかということです。
毎月の負担だけを見れば、修繕積立金は低い方が家計には楽です。ところが、いざ大規模修繕が必要になったときに資金が足りなければ、一時金を集めたり、工事内容を縮小したり、必要な修繕を先送りしたりする可能性があります。
一方で、必要な修繕を見込み、長期的に資金を準備しているマンションなら、将来の見通しを立てやすくなります。
修繕積立金は、「毎月取られるお金」ではなく、建物を将来まで維持するために積み立てているお金と見ることもできます。
国土交通省も、適切な管理と計画的な修繕につなげるため、長期修繕計画や修繕積立金を重要な管理項目として位置付けています。
4.資産価値は「買ったとき」だけで決まらない
住宅には「買った瞬間の価値」と、その後「維持していく価値」があります。特にマンションの場合、一人の所有者だけでは建物全体を管理できません。
管理組合が機能しているか。必要な修繕について話し合えるか。修繕積立金を準備できているか。工事内容や費用を確認できるか。こうした積み重ねが、建物の状態につながります。
国土交通省は、管理計画認定制度について「資産価値向上の取組例」も紹介しています。また、管理状況が見えることで、購入希望者が適正に管理されているか判断しやすくなるとしています。
「管理が良ければ必ず高く売れる」という単純な話ではありません。不動産価格は立地、需給、築年数、間取り、市況など多くの要素で決まります。それでも、同じような条件のマンションを比較するとき、長期修繕計画がない。修繕積立金が不足している。大規模修繕を何年も先送りしている。管理組合が十分に機能していない。こうした状態は、購入する側にとって将来の負担を考える材料になります。
反対に、
これまでどのように管理し、これからどう修繕していくのかが分かることは、そのマンションを安心して選ぶ材料になります。資産価値とは、単に「今いくらで売れるか」だけではありません。
長く安心して住めること。必要な修繕ができること。将来、次に住む人からも選ばれること。そこまで含めて考える必要があるのではないでしょうか。
まとめ
マンションの大規模修繕では、大きなお金が動きます。026年9月28日に公正取引委員会が発表した今回の問題は、施工会社の選定や発注方法を、管理組合側もきちんと確認する必要性を改めて示しました。大切なのは大規模修繕のときだけではありません。
日頃から管理組合が機能しているか。長期修繕計画が作られているか。修繕積立金が足りているか。必要な修繕を先送りしていないか。こうした管理の積み重ねが建物の将来につながります。
マンションを購入するときも、「築何年か」だけを見るのではなく、「これまで、どう管理されてきたマンションなのか」を見る。そして住んでいる人も、自分の部屋だけではなく、マンション全体の管理や修繕に少し関心を持つ。住宅は、買ったときが完成ではありません。管理し、修繕しながら価値を守っていくものです。これからマンションの資産価値を考えるとき、「立地や築年数」に加えて「管理」という視点は、ますます重要になっていくのではないでしょうか。
つづく