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こんにちはキャリーライフ中川です。

大阪府寝屋川市で、居住実態のない住宅に独自の税金を課す「空き家流通促進税」の条例が成立しました。

空き家の所有者は、すでに土地や建物の固定資産税を負担しています。それでも自治体が、さらに新しい税金を設けようとしているのはなぜでしょうか。

背景にあるのは、空き家の数が増えていることだけではありません。

売る、貸す、活用するといった方針が決まらず、長期間にわたって住宅が市場に出てこないことが大きな課題となっています。

今回は、自治体が空き家への課税に踏み切る背景と、所有者が動けない事情、課税だけでは解決できない問題について考えます。

目次

1.全国で増えている「使い道の決まっていない空き家」
2.市場に出るまで5年以上かかる住宅も多い
3.所有者が動けないのには理由がある
4.課税だけでは空き家問題は解決しない

2023年の住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は900万2,000戸となり、過去最多を更新しました。総住宅数に占める空き家の割合は13.8%です。住宅のおよそ7戸に1戸が空き家という計算になります。

空き家の中には、入居者を募集している賃貸住宅や、売りに出されている住宅、別荘なども含まれます。

特に問題となっているのは、賃貸用、売却用、別荘などを除いた、使い道が明確に決まっていない住宅です。その数は全国で385万6,000戸に上ります。2018年から36万9,000戸増えており、空き家全体の中でも増加が目立っています。全国の空き家数は、1993年から2023年までの30年間で約2倍になりました。

人が住んでいなくても、売却や賃貸の募集が始まっていれば、次に使う人へ渡る可能性があります。

難しいのは、

「いつか家族が使うかもしれない」

「荷物が残っているので手を付けられない」

「親族で話がまとまっていない」

という状態が、何年も続く場合です。

住まいとして使われず、市場にも出ていない住宅が増えると、地域内に家はあるのに、新たに住みたい人へ住宅が届かないという状況が生まれます。

寝屋川市は、これまでも不動産、建築、法律、金融などの専門家と連携し、空き家の流通を支援してきました。相続や未登記など、住宅を売却・活用できない原因を整理し、所有者へ解決策を提案する「寝屋川空き家流通推進プラットフォーム」も設置しています。

2025年6月時点では、所有者から同意を得た94件のうち、55件が市場流通につながっています。一定の成果が出ている取り組みです。

ただし、流通するまでには長い時間がかかっています。

プラットフォームを通じて市場に出た空き家のうち、流通まで5年以上かかったものが約90%を占め、最も長いものでは約31年に及んでいました。水道が使われていない、または閉栓されている空き家についても、約80%が市場に出るまで4年以上かかったとされています。

空き家となった直後は、建物に大きな問題がなく、売却や賃貸、再利用ができる可能性があります。数年が経過すると、換気されない室内に湿気がたまり、設備や配管も劣化します。庭木が伸び、雨漏りや害虫などの問題が起きることもあります。

時間がたつほど、選べる活用方法は少なくなり、修繕や片付け、解体の費用は増えやすくなります。

寝屋川市では、人口減少と高齢化が進むことで、2040年の空き家数は約7,700戸となり、2023年から約1,200戸増えると予測しています。

現在の支援だけでは、将来の増加に対応しきれない。

その危機感が、課税という新しい方法につながっています。

空き家が市場に出ないのは、所有者に関心がないからとは限りません。

国土交通省の調査では、空き家を取得した方法として「相続」が約58%を占めています。

相続によって取得した世帯のうち、親が元気なうちに話し合いや遺言、家族信託などの対策を行っていなかった割合は77%でした。

親が亡くなった後に、初めて実家の問題へ向き合う家族も少なくありません。

その時点で、

  • 登記名義が古いままになっている
  • 兄弟姉妹で意見が違う
  • 家財や仏壇を片付けられない
  • 建物の状態や価値が分からない
  • 売ることへの罪悪感がある
  • 遠方に住んでおり、管理や手続きが難しい

といった問題が同時に現れます。

実家は、一般的な不動産とは少し違います。

家族の記憶や親への想いが残っているため、価格や維持費だけでは結論を出せません。

「まだ決められない」という気持ちは自然です。一方で、結論を出せない期間にも固定資産税や火災保険、草刈り、通風、修繕などの負担は続きます。判断を先送りしている間に、建物の状態も変わっていきます。

空き家問題の難しさは、制度や不動産だけではなく、家族の感情と意思決定が深く関わっている点にあります。

寝屋川市が新しい税を設ける大きな目的は、税収を得ることだけではありません。

所有者に追加の負担を求めることで、

  • 売却を始める
  • 入居者を募集する
  • 家族が住む
  • 事業などに活用する
  • 解体して土地を活用する
  • 専門家へ相談する

といった行動を促す狙いがあります。

市場に出ていない住宅が流通すれば、新たに住みたい人の受け皿となります。子育て世代などの転入につながれば、人口構成や地域の活力にも影響します。空き家が増えると、防災、防犯、景観、衛生、所有者調査、近隣からの相談対応など、自治体側の負担も増えます。

寝屋川市の審議会は、こうした社会的費用への対応も、所有者へ新たな負担を求める理由の一つに挙げています。

ただし、税金を課せば、すべての空き家が動き始めるわけではありません。

相続登記ができていない場合や、共有者間で意見がまとまらない場合、建物の傷みが激しく売却が難しい場合は、課税されてもすぐには解決できません。

寝屋川市の答申でも、負担を求めるだけではなく、専門家による相談支援、市場流通の支援、除却費の補助などを組み合わせる必要があるとしています。

必要なのは、「課税するか、支援するか」の二者択一ではありません。

所有者が決断できるように情報を整理し、その後の行動を支える仕組みが求められます。

寝屋川市が空き家への課税に踏み切った背景には、使われていない住宅が長期間、市場に出ないという問題があります。

空き家を売らないことや、残すこと自体が悪いわけではありません。

家族が利用する予定があり、適切に管理できている住宅もあります。

問題になるのは、誰も住まず、今後の使い道も決まらないまま、時間だけが過ぎていくことです。

空き家税は、所有者を責める制度というよりも、「いつか考える」を「そろそろ決める」へ変えるための政策と見ることができます。ただ、税金によって急に結論を迫られても、家族の気持ちや相続の問題は簡単には整理できません。

空き家になった後で慌てるのではなく、親が元気なうちから、誰が住むのか、残すのか、活用するのかを少しずつ確認する。

今回の制度は、空き家対策が「放置された建物への対応」から、「空き家になる前の準備」へ移り始めていることを示しているのではないでしょうか。

つづく