日本では「高齢者が増えている」という話を長く聞いてきました。最新の人口推計を見ると、少し違った変化が起きています。
総務省統計局が2026年10月20日に公表した人口推計によると、2026年5月1日時点の総人口は1億2,281万2千人で、前年同月より53万人減少しました。65歳以上人口は3,622万7千人で、前年から2万4千人増。ほぼ横ばいです。
一方、75歳以上人口は2,156万4千人となり、1年間で47万6千人増えました。増加率は2.26%です。注目したいのは、単に「高齢者が増えた」ということではありません。
65歳以上全体の人数は大きく変わっていないのに、その中で75歳以上の割合が高まっていることです。これからの日本では、高齢化そのものだけでなく、「高齢者層の中でも、より年齢の高い人が増える」という変化を考える必要があります。

目次
1.75歳以上が増えることの意味
2.「住める家」と「管理できる家」は同じではない
3.高齢化の課題は介護が始まってからではない
4.75歳以上の増加は現役世代にも関係する
1. 75歳以上が増えることの意味
75歳になったからといって、突然生活が変わるわけではありません。仕事を続ける人もいれば、旅行や趣味を楽しみ、自立した生活を送る人も多くいます。
一方、人口全体で見ると、年齢が上がるほど介護や生活支援を必要とする割合が高くなる傾向があります。
厚生労働省の資料では、要支援を含む要介護認定率は65~69歳で2.8%、70~74歳で5.7%ですが、75~79歳では11.3%、80~84歳では25.6%、85~89歳では47.7%まで上昇しています。75歳以上全体では30.8%です。これは一人ひとりの将来を示す数字ではありません。ただ、75歳以上の人口が増えるということは、社会全体では介護だけでなく、買い物、移動、通院、家の管理など、暮らしを支える場面も増えていく可能性があります。
2. 「住める家」と「管理できる家」は同じではない
住まいについても、この人口構造の変化は無関係ではありません。長年住んできた家で生活すること自体には問題がなくても、年齢を重ねるにつれて負担になるものがあります。
例えば、2階をほとんど使わなくなっても家全体の管理は必要です。庭木の手入れ、外壁や屋根の修繕、給湯器などの設備交換も続きます。車を運転しなくなれば、スーパーや病院までの距離も以前とは違った意味を持ちます。冬の寒さや室内の段差も、若い頃には気にならなかったものが暮らしやすさに影響することがあります。
住まいを考えるときには、「この家に住めるか」だけではなく、「この家をこれからも無理なく使い、管理し続けられるか」を見る必要があります。
3. 高齢化の課題は介護が始まってからではない
75歳以上人口の増加というと、すぐに介護施設や介護保険の話になりがちです。住まいの問題は介護が必要になってから突然始まるものではありません。
例えば、夫婦二人で暮らしていた家が一人暮らしになる。使わない部屋が増える。庭の管理が難しくなる。住宅設備が古くなり、大きな修繕が必要になる。こうした変化は、要介護認定とは関係なく起こります。選択肢も、施設へ移るか自宅に残るかという二択ではありません。現在の家を使いやすくリフォームする方法もあれば、管理しやすい住宅へ住み替える方法もあります。家族と同居する場合もあれば、生活支援を受けながら今の家で暮らす方法もあります。重要なのは、年齢だけで住まいを決めることではなく、身体、暮らし方、家の状態を合わせて考えることです。
4. 75歳以上の増加は現役世代にも関係する
今回の人口推計は、75歳以上の人だけの話でもありません。これから親世代が75歳、80歳と年齢を重ねていく40代、50代、60代にとっても、住まいをどう支えるかという問題が増えていきます。実家に住み続けるのであれば、将来の修繕や管理をどうするのか。
住み替えるのであれば、残った家をどうするのか。介護施設などへ移ることになれば、それまで暮らしていた住宅の管理を誰が担うのか。住まいの問題は、本人だけでは完結しないことがあります。家に何か問題が起きてから考えるのではなく、今の暮らしと家の状態を一度整理しておくことに意味があります。
まとめ
2026年5月1日時点で、日本の75歳以上人口は2,156万4千人となり、わずか1年間で47万6千人増えました。一方、65歳以上人口全体はほぼ横ばいです。
この数字から見えてくるのは、日本の高齢化が単純な「高齢者人口の増加」だけではなく、高齢者層そのものの高齢化へ移っていることです。年齢が高くなれば、誰もが介護を必要とするわけではありません。それでも社会全体では、介護、生活支援、移動、そして住まいをどう維持するかという課題に直面する人が増えていきます。
住まいについても、「今住めているから大丈夫」だけでは判断できません。これからも管理できるのか。身体や暮らし方が変わっても使いやすいのか。その家を将来どう引き継ぐのか。
人口の変化を見ることは、将来を不安視するためではなく、これから必要になる選択肢を早めに持つための材料になります。
つづく