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「もし親が急に倒れて、自分で意思を伝えられなくなったら、どんな医療や暮らしを望んでいるか分かりますか?」元気なときには、なかなか話題にしにくいことです。

ところが厚生労働省の調査では、人生の最終段階で受けたい医療やケアについて、家族や医療・介護関係者と「話し合ったことはない」と答えた人が68.6%でした。一般国民3,000人を対象とした調査です。

一方で、自分が受けたい医療やケアについて「考えたことがある」と答えた人は51.9%います。自分では考えていても、家族には伝えていない人が少なくないということです。

「どこで暮らしたいか」「誰に相談してほしいか」「何を大切にしているか」など、元気なうちに少しずつ話しておくことです。

目次

1.「人生会議」とは難しい話ではない
2.68.6%が家族と詳しく話していない
3.医療だけでなく「これからの暮らし」も話しておく
4.答えを決めるより、本人の考えを知っておく

1.「人生会議」とは難しい話ではない

厚生労働省では、「人生会議」という取り組みを進めています。正式にはACP(アドバンス・ケア・プランニング)と呼ばれています。難しく聞こえますが、意味はシンプルです。もしものときに備えて、自分が大切にしたいことや、望んでいる生き方、受けたい医療やケアについて、家族や医療・介護関係者と前もって話しておくことです。

一度決めたことを守り続けなければならないものでもありません。体調や生活環境が変われば、考えも変わります。そのため厚生労働省も、本人の考えを家族などと繰り返し話し合い、共有していくプロセスを重視しています。

2026年10月12日には、厚生労働省が和歌山県で普及啓発イベントを開催し、オンライン配信も予定しています。国としても、元気なうちから考える機会を増やそうとしています。

2.68.6%が家族と詳しく話していない

厚生労働省の意識調査では、「人生会議」という言葉自体について、

▪知らない 72.1%

▪聞いたことはあるがよく知らない 21.5%

▪よく知っている 5.9%

という結果でした。まだ一般には十分知られていない言葉です。

さらに、人生の最終段階で受けたい、または受けたくない医療・ケアについて、

▪詳しく話し合っている 1.5%

▪一応話し合っている 28.4%

▪話し合ったことはない 68.6%

となっています。68.6%という数字を見て「話していない家庭は駄目だ」と考えないことです。親子だからこそ、「縁起でもない」「まだ元気なのに、そんな話はしたくない」と感じることがあります。いつ切り出せばいいのか分からない家庭もあるでしょう。

実際、厚生労働省の資料でも、人生会議が進まない背景として「きっかけ」が一つの課題として挙げられています。最初から医療や最期の話まで進める必要はありません。普段の会話から始める方法があります。

3.医療だけでなく「これからの暮らし」も話しておく

人生会議というと、「延命治療をどうするか」といった医療の話だけを想像するかもしれません。本人の希望を知るという意味では、暮らしの話も大切です。

例えば、今の家でできるだけ長く暮らしたい。一人暮らしが難しくなったら子どもの近くへ移りたい。介護が必要になったら施設も考えたい。庭の管理ができなくなったら家をどうするか考えたい。ペットと一緒に暮らしたい。こうしたことも、その人が大切にしている生活の一部です。

住まいの相談でも、家族は「安全だから施設の方がいい」と考えていても、本人は「できるだけこの家で暮らしたい」と思っていることがあります。反対に、子どもは「親は家を残したいはず」と思っていても、本人は「子どもに管理の負担をかけたくない」と考えている場合もあります。

家族だから考えが分かっているとは限りません。本人が話せるうちに考えを聞いておくことは、その後の住まいや介護の選択にもつながります。

4.答えを決めるより、本人の考えを知っておく

話し合うといっても、家族会議を開く必要はありません。

日常の会話の中で、「この家にはいつまで住みたい?」「車に乗らなくなったら買い物はどうしようか」「もし入院したら、誰に連絡してほしい?」「介護が必要になったら、どんな暮らしがいい?」といったところから始められます。

そして、もう一つ確認しておきたいのが、本人が判断できない状態になったとき、誰に自分の考えを伝えてほしいかということです。

厚生労働省も、自分の考えを家族や大切な人、医療・ケアチームと共有しておくことを人生会議の重要な部分としています。一度の会話ですべて決めなくて構いません。「今はこう思っている」と家族が知っているだけでも違います。

本人の状態や気持ちが変われば、また話せばよいのです。人生会議は、将来を固定するためのものではありません。いざというとき、家族だけで本人の人生を推測しなくてもよいようにするための準備と考えると、少し身近になります。

まとめ

厚生労働省の調査では、人生の最終段階の医療やケアについて、家族などと「話し合ったことはない」と答えた人が68.6%でした。一方、自分自身では考えたことがある人は51.9%います。考えていても、伝えていない。

この差は、家族にとって大きな意味を持つことがあります。

突然入院したとき。介護が必要になったとき。一人暮らしが難しくなったとき。今の家を離れることになったとき。その場になって初めて本人の希望を確認しようとしても、十分に話せない場合があります。

だから元気なうちから、「これから、どんな暮らしをしたい?」というところから話しておく。医療のことも、介護のことも、住まいのことも、一度に全部決める必要はありません。

大切なのは、答えを作ることより、本人が何を大切にしているのかを家族が知っておくことです。「もしものとき」の話は、最期のためだけの話ではありません。これからをどう暮らしたいかを家族で知るための話でもあります。

つづく