こんにちはキャリーライフ中川です。
途中で売る?住宅ローンを「人生全体」で考える
家を買うとき、住宅ローンは「何年で返すか」を考えます。35年、40年、最近では50年という選択肢もあります。30歳で家を買った人が、その後50年間ずっと同じ家族構成、同じ仕事、同じ地域で暮らすとは限りません。子どもが生まれることもあれば、独立することもあります。転勤や転職、親の介護、収入の変化、高齢期の住み替えなど、住宅ローンを返している間にはさまざまな変化が起こります。
そこで考えたいのが、「住宅ローンを完済できるか」だけで家を考えてよいのかということです。住宅は暮らす場所であると同時に、売却することのできる資産でもあります。一方、家族の思い出が残る場所でもあり、単純にお金だけでは評価できません。
今回は「何年で返すか」から少し離れて、住宅と住宅ローンを人生全体から考えてみます。

目次
1.「家を買って、一生住む」は当たり前ではなくなる?
2.住宅ローンが残っていても家は売れる?
3.家を「資産」で見るとはどういうこと?
4.住宅ローンは人生の変化に対応できる余白を残す
1.「家を買って、一生住む」は当たり前ではなくなる?
住宅購入には、一つの分かりやすい人生設計がありました。若いうちに家を買い、住宅ローンを払い、定年を迎える頃には完済する。その家で老後を過ごし、最後は子どもへ残す。
今でも、この暮らし方が合っている人はたくさんいます。家族や働き方が多様になった現在、すべての人が同じ道を進むとは限りません。
国が2026年3月に策定した新しい住生活基本計画でも、「人生100年時代」を前提として、その時々のライフスタイルに適した住宅を過度な負担なく確保できる住宅市場を目指すことが示されています。既存住宅を活用しながら、住み替えやリフォームをしやすくすることも今後の住宅政策の方向になっています。住宅を「一度買ったら最後まで同じ家」という一本道だけで考えない方向ともいえます。
30代には子育てしやすい戸建てが合っていても、60代には夫婦2人で管理しやすい住宅が合うかもしれません。80代になれば、家の広さより病院やスーパーへの行きやすさを重視する可能性もあります。自分の暮らしが変わるなら、住まいも変わってよい。住宅ローンを考えるときにも、この前提を持っておく必要がありそうです。
2.住宅ローンが残っていても家は売れる?
「住宅ローンを組んだら、完済するまで家を売れない」と思っている人もいるかもしれません。住宅ローン返済中でも、家を売ること自体は可能です。
一般的には、住宅を引き渡すまでに住宅ローンを完済し、金融機関が設定している抵当権を抹消する必要があります。フラット35でも、返済途中の住宅を他人へ譲り渡す場合、原則として融資金を全額返済することになっています。
重要になるのが、「今、家はいくらで売れるのか」と「住宅ローンはいくら残っているのか」
の二つです。
例えば、家が4,000万円で売れるとしても、住宅ローンが4,500万円残っていれば、売却代金だけでは完済できません。反対に住宅ローン残高が2,500万円なら、売却費用などを除いても一定の資金が残る可能性があります。
住宅購入後は、購入価格だけではなく、現在の住宅価値とローン残高の差を見ることも大切になります。金利が上がったから、転勤になったから、家族人数が変わったからといって、簡単に売れば解決するわけではありません。住宅を買うときから、「もし途中で暮らしが変わったら、この家はどうなるだろう」と考えておく意味があります。
3.家を「資産」で見るとはどういうこと?
「住宅は資産です」と聞くことがあります。一方で、「日本の家は建てたら価値が下がる」と言われることもあります。どちらか一方だけで考えると、少し極端です。
住宅の価値は、土地、建物、立地、築年数、住宅性能、維持管理の状態、市場での需要などによって変わります。大切なのは、資産価値が高い住宅を買えば必ず得をする、という話ではありません。
住宅の本来の役割は、まず暮らすことです。家族と過ごした時間、子育てのしやすさ、地域とのつながりなどは、不動産査定額だけでは表せません。
一方、人生の途中で売却や住み替えが必要になったときには、住宅の市場価値がその後の選択肢を大きく左右します。
例えば、
「5,000万円で買った家だから5,000万円の資産がある」とは考えられません。仮に現在の売却可能額が4,000万円で住宅ローン残高が3,000万円なら、単純にはその差額が一つの目安になります。実際には仲介手数料や税金などの売却費用も考える必要があります。
住宅を資産として見るということは、買った金額を見るのではなく、今の価値と残っている負債を一緒に見ることです。最近、残価設定型住宅ローンなど「将来の住宅価値」を前提とした金融商品が出てきているのも、こうした考え方と関係しています。
4.住宅ローンは人生の変化に対応できる余白を残す
住宅購入時には、どうしても「今買える家」に目が向きます。銀行から5,000万円借りられる。毎月の返済が家賃と同じくらいになる。希望していた4LDKが買える。どれも重要です。
住宅ローンは数十年間続きます。今の収入がずっと続くとは限りませんし、子どもの教育費が増える時期もあります。親の介護で働き方を変える可能性もあります。逆に収入が増え、繰上返済できることもあるでしょう。私が住宅を考えるときに大切だと思うのは、「最大でいくら借りられるか」ではなく、「変化が起きても動ける状態を残せるか」という視点です。
住宅ローンを返しながら貯蓄もできるのか。将来売却するときにローン残高が住宅価値を大きく上回らないか。家族が減ったときにも使いやすい住宅なのか。年齢を重ねたときに住み替える選択肢を持てるのか。
住宅金融支援機構には繰上返済や借換えなど、返済途中に住宅ローンを見直す仕組みもあります。住宅ローンは契約した日に、その後35年の人生まですべて決めてしまうものではありません。、途中で選択できる余地を残すためには、最初の借り方と住宅の選び方が重要になります。
まとめ
住宅ローンを考えるとき、金利や毎月返済額はもちろん重要です。しかし、それだけでは数十年間の住宅選びを判断するには足りません。30代で必要だった家が、60代にも同じように必要とは限りません。家族人数も変わります。仕事も変わります。親の介護や自分自身の健康、高齢期の暮らし方によって、住みたい場所も変わる可能性があります。
だから住宅ローンは、「何年で全部返すか」だけではなく、「人生の途中で何が起きても、どんな選択肢を残せるか」という見方も必要だと思います。
一生住むつもりで家を買うことも一つの選択です。将来売却する可能性を考えて住宅を選ぶことも、便利な場所へ住み替えることを想定することもできます。そして、子どもへ家そのものを残すのではなく、住宅を売却して資産として残すという考え方もあります。
住宅は「暮らし」であり、「資産」でもあり、長い人生の中で大きなお金を使う選択でもあります。住宅ローンを組むときには、今の自分だけでなく、10年後、20年後の自分にも選択肢を残す。金利や返済期間が多様になっている今、住宅ローンを見るうえで大切なのは、そんな長い時間軸なのではないでしょうか。